そのほか、そうした行動をとることには「シグナリング効果」もある。適切に「ノー」と言うことで、リーダーは自信を示すことができる。周囲に対し、自分は恐れることなく、自らにとっての重要事項を守れる人だということを、示すことができる。
こうした態度によって、周囲の人たちはその人への信頼を高めることになる。その人がより重要な役割を任されることになる可能性も、高まるだろう。
「退路を断たずに」線を引く
何か頼まれたとき、それを断ることにはリスクが伴うと感じられるだろう。問題は、その点にある。誰でも周囲の人から、非協力的な人とは思われたくない。だが、人間関係を損なわずに境界線を引くのは、不可能なことではない。重要なのは、断り方だ。
その方法の1つが、自分自身の優先事項を明確に説明することだ。ただ素っ気なく「ノー」と言うのではなく、「重要なことだけれど、今は別件の締め切りが近く、その対応に追われています。また来週、改めて検討させてもらえますか?」などと伝えてみてはどうだろう。相手への敬意と、自分自身の境界線を同時に示すことができる。
また、代案を提示すという戦略もある。たとえ断ったとしても、依頼する相手としてより適切だと思える人に尋ねてみるよう提案すれば、協力的な態度を示したことになる。いずれにしても、その人が自分の時間を守ることで、誰かを立ち往生させることにはならない。
また、これは予防的な行動にもなる。自分が今取り組んでいること、現実的に対応可能なことを相手と共有することによって、お互いに境界線を理解しやすくなる。透明性を高めることは、誤解が生じるリスクを低減させることにつながる。
こうした行動によって、周囲は次第に、その人に対する見方を変えていくだろう。頼めばいつでも応じてくれる人ではなく、賢明な選択をするプロフェッショナルとして、受け止められるようになる。「ヘルパー」ではなく、「リーダー」として、評価されるようになるはずだ。


