冬季の東欧で大規模な攻撃をする際の後方支援上の課題について、軍事史は明確な警告を与えている。これは過去に多大な犠牲を払って得られた教訓だ。
今日、ロシア軍はウクライナへの大規模な冬季攻勢の一環として兵力の増派を命じるなど、この過ちを繰り返そうとしているように見える。一方、ウクライナ軍はロシア軍の後方支援と補給線を意図的に標的としており、同軍が大規模な攻勢を維持する能力に打撃を与えている。ロシア軍の増派は短期的な成果をもたらすかもしれないが、十分な補給がなければ、その成果は代償が大きく、長期的に維持することは困難だろう。
ウクライナ軍のオレクサンドル・シルシキー最高司令官は17日の会合で、ロシア軍の人員が約71万人に増加したと報告した。この数字の信ぴょう性は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が後の演説で認めた。この数はロシアの初期侵攻部隊約15万人に比べると規模が大きいように見える。米シンクタンク「外交問題評議会(CFR)」をはじめとする研究機関は今年、ウクライナに派兵されたロシア軍の規模を60万人と推定していた。ロシアの現在の攻勢の規模と最近の徴兵を考慮すると、約20%の兵力増強は現実的だ。
ロシア軍による冬季の兵力増強
一見すると、ロシア軍の増派は理にかなっている。前線では、ロシア軍の進撃は行き詰まり状態にあるか、わずかな進展にとどまっている。例えば、ロシア軍はウクライナ東部の要衝ポクロウシクの占領に17カ月を費やしたが、ウクライナは依然として同市の大部分を支配している。同様に、ロシア軍は2024年7月にウクライナ東部要衝チャシウヤルを掌握したと主張しているが、同市では今も戦闘が続いている。一方、ウクライナ軍は、既にロシア軍の移動を制限している地雷原や河川に加え、対戦車用の溝やコンクリート製の障壁、有刺鉄線や障害物などで防衛線を大幅に強化したと報じられている。
今冬の増派により、ロシア軍はこれらの重要都市を制圧し、ウクライナの防衛線を突破するかもしれない。だが、冬季の東欧でこれほど大規模な兵力増強を実施することは、重大な二次的影響を招くリスクを伴う。攻撃を持続するには、前線に絶え間なく物資を供給しなければならない。冬季の過酷な気候によって輸送網や燃料消費、維持管理、部隊の後方支援に大きな負担がかかる。寒冷なウクライナ東部の最前線の兵士は特に燃料の補給量を増やす必要があるが、厳しい気象条件により補給能力が低下している。増派によってロシア軍は短期的な戦術的利益を得られる可能性はあるものの、長期的には既に限界を超えた後方支援網にさらなる負担をかけることになる。
ウクライナ軍によるロシア軍後方支援網への攻撃
これらの後方支援上の課題は、ウクライナ軍がロシア軍の補給線や後方支援網を体系的に標的とする戦略によって悪化している。戦術面では、ウクライナ軍の無人機(ドローン)がロシア軍の標的を積極的に探す殺人区域を確立している。補給車両は一般的に装甲がなく、遮蔽(しゃへい)物がほとんどない予測可能な道路を走行し、燃料や弾薬などの極めて不安定な貨物を運ぶことが多いため、特に危険が大きい。
戦略面では、ウクライナ軍は長距離攻撃無人機を用いてロシアが2014年に併合したウクライナ南部クリミア半島とロシア国内の鉄道車両基地や燃料貯蔵施設を攻撃し、同国軍への物資供給を阻止している。ウクライナ軍はロシア国内の奥深くに位置する防衛製造施設、特に無人機製造や電子戦能力を支える施設を標的とした無人機攻撃も実施している。こうした攻撃はおおむね成功しており、同軍はここ数カ月で攻撃の頻度と激しさを増している。



