欧州

2025.12.29 10:00

ロシア軍が物資補給の危機に 冬季の兵力増強で

ウクライナ北部チェルニヒウ州で訓練に参加する同国軍の兵士。2024年11月24日撮影(Maksym Kishka/Suspilne Ukraine/JSC "UA:PBC"/Global Images Ukraine via Getty Images)

この手法の有効性は、ウクライナ軍が東部の村クチェリウヤルを奪還したことで明確に実証された。ロシア軍が同村に足場を築くと、ウクライナ軍の無人機は占領部隊を補給と増援から切り離した。ロシア軍は静止した防御態勢に追い込まれ、最終的に降伏したため、ウクライナ軍は村を完全に奪還することができた。戦線の他の地域でも、ロシア軍兵士らは装備不足のほか、補給物資の受け取りが困難だと訴えており、クチェリウヤルは単独の事例ではなく、同軍の後方支援崩壊の一部であることを示唆している。

advertisement

ウクライナ軍の成功は主に、ロシア軍の無人機対策に先んじる高度な無人機を迅速に開発する能力によってもたらされている。この猫とネズミの駆け引きのような状況の中、ウクライナは戦前からの技術部門の恩恵を受けており、無人機の設計に新たな機能を迅速に組み込むことができた。また、北大西洋条約機構(NATO)加盟国から供給される先進的な処理チップや電子部品によって、処理能力や自律性、電子攻撃への耐性を向上させた。

ロシア軍の増派による長期的な影響

消耗戦では、特にウクライナ軍が兵員募集に苦慮する中でロシア軍の兵力が増加すれば、数学的にはロシアの攻勢が有利になるはずだ。しかし、現実はそれほど単純ではない。

こうした利点は、新たに動員された兵士が既存部隊と同等の戦闘能力を有する場合にのみ実現する。だが、ロシアの動員ペースを考慮すると、その可能性は低い。さらに重要なのは、この増派が軍の後方支援と補給網にさらなる負担をかけ、戦線全体の戦闘能力を低下させる点だ。特に冬季には補給の重要性が増すため、その影響は大きくなる。こうした状況下では、増派はロシア軍ではなくウクライナ側に有利に働く可能性がある。

advertisement

さらに、ロシア軍の兵力が集中することで、ウクライナ軍の無人機や砲兵の攻撃目標が拡大することになり、ロシア軍の損失は大きくなる。こうした損失が蓄積するにつれ、ロシア軍は戦闘効果を維持することが困難になるだろう。損失によって兵士の士気は低下し、ロシア国内で戦争終結を求める声が高まるかもしれない。

とはいえ、ウクライナの成功の可能性は、無人機戦での技術的優位性を維持できるかどうかに懸かっている。ロシア軍は最近、霧や悪天候でウクライナ軍の一人称視点(FPV)無人機が飛行不能となった際に限定的な進展を遂げたが、ウクライナはその後、こうした状況下でも運用できるよう機材や戦術を適応させた。ウクライナが無人機技術の優位性を失った場合、ロシアは現在の兵力増強によって、一部の目標を達成できる可能性がある。

ロシアの冬季増派は、ウクライナ軍が大規模な攻撃に防衛態勢を調整する中で、初期段階では一定の成果をもたらすだろう。しかし、ロシア軍の前進する部隊は、補給が不安定なために占領を維持できなかったクチェリウヤルと同様の状況に陥る危険性がある。長期的に見ると、ロシアは東欧の冬という厳しい時期に持続不可能な攻勢を開始するという、ナポレオンの過ちを繰り返しているように見える。この増派は、ロシアが求める持続的な成果をもたらす可能性は低く、むしろ大きな代償を強いるリスクがある。

forbes.com 原文) 

翻訳・編集=安藤清香

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事