ドナルド・トランプ米大統領が、新たに「トランプ級」の戦艦を建造し、米海軍に「黄金艦隊」を編成すると発表するやいなや、批判的な向きはそれが実現しそうにない理由を並べ立て始めた。トランプ級戦艦が輝かしい失敗に終わりそうな理由はいくつもある。
最大の問題は、この軍艦の建造、さらにはその設計にすら予算が確保されていないことだ。設計作業だけでも、完成までに何年もかかる可能性がある。
トランプ級戦艦は現状、1番艦として構想されている「ディファイアント」(BBG-1)のレンダリング画像としてしか存在しないようだ。テレビドラマ「スタートレック」シリーズには同名の「ディファイアント」(NX-74205)という架空の宇宙艦が登場するが、それよりもはるかに実体に乏しい。それでいて細かい設定には凝っていて、推進システムや兵装、乗員区画の配置を含む詳細な仕様が公表されている。
Trump Unveils New Battleship Class; Proposed USS Defiant Will Be Largest U.S. Surface Combatant Since WWII — USNI Newshttps://t.co/COTmxL2gCF pic.twitter.com/HILut7kDYb
— U.S. Naval Institute (@NavalInstitute) December 23, 2025
トランプはトランプ級戦艦の最初の2隻について、2年半で建造できると受け取れるような発言をしたが、戦艦はボールルーム(大宴会場)とは違う(編集注:ホワイトハウスでは一部を取り壊してボールルームの建設が進められており、トランプの2029年1月の「任期満了のかなり前」に完成すると見込まれている)。米海軍最後の戦艦級であるアイオワ級の開発は、詳細な調査を行った戦艦設計諮問委員会の勧告を受けて1938年初めに着手された。1番艦の「アイオワ」(BB-61)が就役したのは、5年後の1943年2月22日のことだった。
アイオワ級戦艦の最終設計を完成させるまでには延べ343万2000人時を要し、これは製図手の作業時間に換算すると206年超に相当する。完成した設計図の総重量は約159トンにのぼり、幅約76センチの図面をすべて並べると長さは約1770キロに達すると伝えられる。
アイオワ級戦艦は、サウスダコタ級をはじめとする過去の戦艦の設計を直接発展させて開発された。それに対してトランプ級は一から設計しなくてはならない。
もうひとつの問題は労働力の不足だ。



