北米

2025.12.29 09:00

「トランプ級戦艦」は実現するのか? 第二次大戦期の戦艦とは別物

米フロリダ州の邸宅マールアラーゴで2025年12月22日、「トランプ級」戦艦の建造計画を発表するドナルド・トランプ米大統領(Tasos Katopodis/Getty Images)

アイオワ級戦艦を建造した各海軍工廠では、男女数万人が交代制で昼夜を問わず働いていた。戦時中、米海軍最大の造船所で、ニューヨーク州最大の雇用主でもあったブルックリン海軍工廠では、7万1000人あまりが雇用されていた。

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現代では自動化が進んでいるとはいえ、軍艦の建造にはむしろ以前より長い時間がかかる。つまりトランプ級戦艦が設計され、建造されるとしても、2030年代半ばまでに完成する見込みは薄い。

時代遅れの軍艦

批判者たちは、戦艦は時代遅れだとも述べている。それが明白になったのは、旧日本海軍の艦上機が1941年12月7日(現地時間)、真珠湾を攻撃し、港内に停泊していた米艦隊を撃沈した時だった。同様に、日本海軍の超弩級戦艦「大和」と姉妹艦の「武蔵」もまた、アイオワ級戦艦の大口径砲ではなく、航空母艦搭載の急降下爆撃機や雷撃機によって撃沈されている。

そもそも、戦艦が「主役」になった時代は歴史上一度もなかったという見方もできる。近代において、戦艦対戦艦の決定的な交戦はほぼ皆無だった。戦艦同士による真の決戦が行われた唯一の例は日露戦争中の日本海海戦であり、日本海軍がロシア帝国海軍の艦隊に壊滅的な打撃を与えた。

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第一次世界大戦中のユトランド沖海戦や第二次世界大戦中のデンマーク海峡海戦でも、戦艦同士の交戦自体はあり、後者にはドイツ海軍の有名な戦艦「ビスマルク」が参加している。

しかし太平洋戦争では、米海軍が想定していたような戦艦同士の決戦は結局起こらなかった。代わりに、戦艦は主として対沿岸射撃の役割を担った。こうした能力は、今日では誘導ミサイル駆逐艦や巡洋艦でも果たせると批判者らは指摘している。

トランプ級戦艦はアイオワ級とは別物に近い

ここで押さえておくべきなのは、戦艦は19世紀末から20世紀初めにかけて大きく進化したという点だ。日本海海戦に参加した軍艦はすべて「前弩級(プレ・ドレッドノート)戦艦」だった。なぜこう呼ばれているかと言うと、1906年に英国海軍が革新的な戦艦「ドレッドノート」を就役させたことで、それらは時代遅れになったからだ。この「弩級戦艦」の登場は世界的な建艦競争を引き起こし、以後30年ほどの間に軍艦の大型化や重武装化、装甲強化が進んでいった。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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