ヒマラヤへの旅行を計画しているだろうか。エベレストのオーバーツーリズム(過剰観光)が極限に達したことを受け、ネパール政府は国内ヒマラヤの別の97峰について、登山許可を無料にする方針だ。本記事で知っておくべき点をまとめる。
ネパール・ヒマラヤのエベレスト山はオーバーツーリズムの代名詞だ。ネパール政府は登山者を他の峰へ誘導しようとしている。具体的には、カルナリ州およびスドゥールパシュチム州にある峰への登山を希望する人について、許可料を免除する。対象の峰は標高5870メートルから7132メートルに及ぶ。BBCによれば、両州は国内でも特に僻地で訪問者が少なく、経済開発が最も遅れている地域の一部だ。
この措置は、現在ほとんど訪問者がいない僻地でアドベンチャー・ツーリズムと地元雇用を促進しつつ、混雑、廃棄物、安全面の懸念を招いてきたエベレスト地域への圧力を和らげる狙いがある。対象の97峰は真の僻地にあり、過去2年間に登られたのは68峰にとどまる。比較すると、2024年にエベレスト向けに発行された登山許可は421件だ。
登山団体はこの取り組みを歓迎する一方、インフラの未整備やアクセス費用の高さが、実際にこの「無料」になった峰を利用する登山者の数を制限しかねないと警告している。
エベレストはオーバーツーリズムの代名詞
エベレストは長年、登山者の「聖地」だったが、近年はオーバーツーリズムの象徴になりつつある。ナショナル・ジオグラフィックの表現では、「世界で最も標高の高いごみ捨て場」とも呼ばれている。
2025年、このユネスコ世界遺産は、オーバーツーリズムのため旅行が推奨されない場所の一覧であるFodor’s No Listに掲載された。エベレストを含むサガルマータ国立公園(サガルマータは「空の額」を意味する)への来訪者数は、過去25年間で急増し、年間約6万人に達している。
エベレスト登山の最大の障壁は、技量より資金であるという傾向が強まっている。2023年は近年で最悪級のシーズンとなり、近年では最多水準の死亡者が出たことが確認されている。
また、こうした数千人が毎日、排泄物やその他のごみを1742ポンド(約790.2キロ)生み出しており、当局にとっては対応が極めて難しい状況である。捨てられた空の酸素ボンベ、放棄されたテント、食品容器への対処に追われている。
さらに、気候変動で雪や氷が融解するにつれ、過去数十年に残されたごみが次々と露出し、管理が必要になっている。ごみや汚水は村の外にある大きな穴に投棄され、雨季(モンスーン)には水路へ流れ込む。その結果、地域の流域が汚染され、地元住民の健康が危険にさらされている。
ただし、観光客が残すのは廃棄物だけではない。観光客がロッジや薪を必要とするため、森林伐採も大きな問題となっている。来訪者があまりにも多いため、登山道は浸食されてきた。天候条件が適する年の数週間に、何百人もの人が山頂を目指し、登山者1人につき、調理、装備運搬、ガイドを担う少なくとも1人の地元労働者が付く。幸運にも山頂に到達した人にとっても、山頂が混み合いすぎて立つ場所がほとんどないと報じられている。
エベレストは世界で最も「高い」山
エベレストはヒマラヤ最高峰で、標高は8849メートルだ。また、海抜からの高さという点でも世界で最も高い山である。BBCによれば、これは地球上で最も高い高度に当たる。ちなみにK2(ゴドウィン・オースティンとしても知られる)は8611メートルで2位である。
興味深いことに、海面下から始まる山も含めて考えるなら、より「高い」山がある。その1つがハワイの休眠火山マウナ・ケアで、基底部からの高さは約1万メートルに達する。ただし、この山の約6000メートル分は海中にあるが、それでも理屈でいえばエベレストよりほぼ1.4キロメートル「高い」。
さらに視野を広げて太陽系全体を見ると、マウナ・ケアの2倍の高さの山がある。火星のオリンポスは基底部から頂上まで約16マイル(24キロメートル)で、エベレストの3倍の高さである。幅は340マイル(約547キロメートル)で、ハワイ諸島の連なり全体より広い面積を覆う。



