これまでロシアは独自の新型宇宙ステーション「ROS」(ロシア軌道ステーション)の建設を計画し、その最初のモジュールを2027年に打ち上げようとしてきた。しかし12月18日、その計画の大幅な変更が発表された。
ISS(国際宇宙ステーション)は8基のモジュールからなる「アメリカ区画」と、6基の「ロシア区画」に大別される。今回ロシアが示したプランでは、ISSが退役する2030年にロシア区画だけを切り離し、それをロシアの新ステーションとして継続運用する。分離の前後には、複数の新モジュールが追加される予定だ。つまり新車購入を断念し、耐用年数を過ぎた愛車を乗り続け、その車両をカスタムするような選択ともいえる。
これまでロシアは老朽化を理由にISSからの早期撤退を望んできた。一方でアメリカは、ISSの後継機となる民間宇宙ステーションの開発遅延から、ISSの運用期限を延ばす説得をロシアに対して続けてきた。しかし、今回ロシアが発表した計画が実現すれば、2031年に南太平洋に沈むのは、日本と欧州のモジュールを含むアメリカ区画だけとなり、空気漏洩が続くロシア区画は軌道上に残るという皮肉な事態となる。
ISSの分離は可能なのか?
ロシア科学アカデミー生物医学問題研究所(IBMP)のオレグ・オルロフ所長は、18日の記者会見で以下のように述べた。「ROSはISSのロシア区画の一部として展開され、ISS計画が終了した後はISSから分離して自律的に航行する。このシナリオは、ロスコスモス(ロシアの国営宇宙開発企業)の科学技術評議会からすでに承認されている」。この発表はTASSによって同日に伝えられた。
オルロフ氏のいう「展開」とは、ISSに接続したままのロシア区画に追加モジュールを接続していくことで、新たな宇宙ステーション「ROS」を構築することを意味する。現時点で「ROS」は、ISSのロシア区画「ロシア軌道セグメント(Russian Orbital Segment)」を意味するが、ISSからの分離によってその意味は「ロシア軌道ステーション(Russian Orbital Station)」へと変わる。



