2031年にROSがISSから切り離されると、ROS構築の第2フェーズがはじまり、2033年までには科学実験、観測、生産などに特化した「ターゲット・モジュール」を2基ドッキングすることでさらに機能が拡張される。これらの新型モジュールはすべて、2021年に発表された独自ステーションROSに接続されるはずだったものを、今回のプランに則して転用することになる。
相次ぐロシアの重大インシデント
今回ロシアがROSの計画を変更したのは、主には資金不足によるものと思われる。ロシアの財政難は2014年のクリミア侵攻後にはじまり、ウクライナ戦争の長期化がそれを助長している。それはISSミッションにも影響を及ぼし、近年ではロシア側の重大インシデント(事故に発展する恐れのある事案)が頻発している。同時に、極軌道に有人宇宙船を投入可能なボストチヌイ宇宙基地の重要性も希薄化する。同基地は現在、3000億ルーブル(約6000億円)という莫大な予算をかけ、ロシア極東のアムール州での建設が進められている。
2019年に発生したスヴェズダからの空気漏洩は現在に至るまで続き、2021年には多目的モジュール「ナウカ」のスラスタ(姿勢制御装置)の噴射が止まらなくなり、ISSを540度回転(前転)させるインシデントが発生した。また、2022年には、ISSに係留中の有人宇宙船「ソユーズ」(MS-22)から冷却液が漏洩したことでクルーが一時的に帰還不能になり、翌2023年には無人輸送機「プログレス」(MS-21)と「ナウカ」からも冷却液が漏洩した。さらに2025年11月には、バイコヌールの射場施設がソユーズ(MS-28)の打ち上げ直後に崩壊し、現時点ではISSへの人員物資の輸送が不可能になっている。
こうした状況のなか、ロシアは独自ステーションをゼロから構築するのではなく、ISSのロシア区画の大部分を流用しつつ構築することで、新ステーション建設にかかるコストと時間を圧縮しようとしている。この策によってROSの建設初期における自律的な軌道調整が不要となり、ISSから電力も得られる。また、ISSに滞在するクルーによってシステムをセットアップすることができ、ISSに設置された科学機器や研究資材を新モジュールに移設することも可能になる。


