ISSを分離する計画は、これまでにも検討されてきた。生命維持装置は米露の両区画にあるので問題ない。アメリカ区画に設置された巨大なソーラーパネルによる電力はロシア側にも供給されているが、ロシアのモジュールもパネルを装備しているため電力を自給できる。ロシアだけが可能とされてきたISSの軌道修正も、スペースXの宇宙船クルードラゴンによるリブースト(エンジン再点火による軌道引き上げ)が2024年に成功。同社は現在、ISSを廃棄するための「USDV」(米国軌道離脱機)の開発も進めている。
ただし、米露の両区画は複雑につながり相互に補完し合っている。これをほぐしながら分離するには一定期間にわたる検証と、船外活動を含めた作業が必要になる。その作業がISSの運用が停止される2030年までに間に合わなければ、すでに満身創痍な状態にあるISSの運用がさらに延長されるというリスクを負うことになる。また、これまでの滞在クルーが持ち込んだ真菌の存在も問題視されている。真菌は人体に感染症を引き起こすだけでなく、条件さえ整えば金属さえ腐食するからだ。
ROS建設のシーケンス
オルロフ氏が語った計画によると、ロスコスモスは2027年に科学電力モジュール「NEM-1」を打ち上げ、ISS側のノード(接続)・モジュール「プリチャル」にドッキングさせる。NEM-1は科学実験施設の役割を果たすほか、大型の太陽電池パネルや生命維持システムを備えており、将来的には老朽化したロシア区画のモジュール「ザーリャ」や「スヴェズダ」に替わって、新ステーションの初期段階ではその中核を担う。
...for a technical background, please visit our beautifully illustrated home page for the Science and Power Module: https://t.co/OUMmMSQTYs pic.twitter.com/7i91Lh2Iz4
— Anatoly Zak (@RussianSpaceWeb) December 19, 2025advertisement
ロシアのサイエンス・ライターであるアナトリー・ザク氏による「NEM」の予想図
続いて2030年までに「ノード・モジュール」「ゲートウェイ」「コア・モジュール」の3基も打ち上げられる。ノード・モジュールは6つのドッキングポートを持ち、ゲートウェイはクルーが宇宙空間に出るためのエアロックを備え、コア・モジュールはコントロールセンターの役割を果たし、推進制御、生命維持システムを装備し、居住スペースにもなる。これら3つの新型モジュールもプリチャルに接続されると思われるが、詳細は公表されていない。
...Here is the updated rendering of the ROS complex immediately after its planned separation from the ISS, as it is envisioned right now, after the latest redesign in recent weeks and a Roskosmos "deal" with India.
— Anatoly Zak (@RussianSpaceWeb) December 6, 2025
Details, updates at the usual place:https://t.co/qIG0zBKx3A pic.twitter.com/wrsyYfor6J
アナトリー・ザク氏によるレンダリング。ISSから分離後のROS複合体の予想図
こうしたROSプロジェクトのコストは6089億ルーブル(約1兆2200億円)に上ると報じられている。


