宇宙

2025.12.30 10:00

ロシア「ISSを2つに分離する計画」を発表、完全新造ステーションを断念してISS流用へ

(c)NASA(著者加工)

ISSを分離する計画は、これまでにも検討されてきた。生命維持装置は米露の両区画にあるので問題ない。アメリカ区画に設置された巨大なソーラーパネルによる電力はロシア側にも供給されているが、ロシアのモジュールもパネルを装備しているため電力を自給できる。ロシアだけが可能とされてきたISSの軌道修正も、スペースXの宇宙船クルードラゴンによるリブースト(エンジン再点火による軌道引き上げ)が2024年に成功。同社は現在、ISSを廃棄するための「USDV」(米国軌道離脱機)の開発も進めている。

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ただし、米露の両区画は複雑につながり相互に補完し合っている。これをほぐしながら分離するには一定期間にわたる検証と、船外活動を含めた作業が必要になる。その作業がISSの運用が停止される2030年までに間に合わなければ、すでに満身創痍な状態にあるISSの運用がさらに延長されるというリスクを負うことになる。また、これまでの滞在クルーが持ち込んだ真菌の存在も問題視されている。真菌は人体に感染症を引き起こすだけでなく、条件さえ整えば金属さえ腐食するからだ。

ROS建設のシーケンス

ノード・モジュール「プリチャル」に接続する有人宇宙船ソユーズMS-27。2025年8月撮影。(c)NASA
ノード・モジュール「プリチャル」に接続する有人宇宙船ソユーズMS-27。2025年8月撮影。(c)NASA

オルロフ氏が語った計画によると、ロスコスモスは2027年に科学電力モジュール「NEM-1」を打ち上げ、ISS側のノード(接続)・モジュール「プリチャル」にドッキングさせる。NEM-1は科学実験施設の役割を果たすほか、大型の太陽電池パネルや生命維持システムを備えており、将来的には老朽化したロシア区画のモジュール「ザーリャ」や「スヴェズダ」に替わって、新ステーションの初期段階ではその中核を担う。

ロシアのサイエンス・ライターであるアナトリー・ザク氏による「NEM」の予想図

続いて2030年までに「ノード・モジュール」「ゲートウェイ」「コア・モジュール」の3基も打ち上げられる。ノード・モジュールは6つのドッキングポートを持ち、ゲートウェイはクルーが宇宙空間に出るためのエアロックを備え、コア・モジュールはコントロールセンターの役割を果たし、推進制御、生命維持システムを装備し、居住スペースにもなる。これら3つの新型モジュールもプリチャルに接続されると思われるが、詳細は公表されていない。

アナトリー・ザク氏によるレンダリング。ISSから分離後のROS複合体の予想図

こうしたROSプロジェクトのコストは6089億ルーブル(約1兆2200億円)に上ると報じられている。

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編集=安井克至

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