映画

2025.12.28 13:45

人間が「人間そっくり」を愛するとき|「A.I.」「惑星ソラリス」

Bo Dean / Adobe Stock

Bo Dean / Adobe Stock

最新技術は常にいつのまにか我々の生活に入り込み、それなしには成立しない生活環境を作り出していく。今その先端にあるのは、言うまでもなく「人工知能」、AI(Artificial Intelligence)だ。

2022年にリリースされ、生成AIのブームのきっかけになった対話型AIであるchatGPTを、仕事や学習に活用している人は多いだろう。知人に聞いた話では、「推し」の喋り方をchatGPTに学習させ、毎日話しかけては癒してもらっているというケースまである。今は文字ベースのコミュニケーションだが、それを音声に変え、ビジュアルを3D化すると、その完成形は「推し」をモデルとした人型ロボットだ。

もちろんこれは、人権や著作権との兼ね合いで実現は難しいだろうが、人工知能を搭載したロボットの進化は日進月歩の勢いで、家庭用のコミュニケーション型ペットロボットも何種類も販売されている。数年後にはさまざまな産業で人型ロボットが爆発的に普及するとの予測もある中、癒し用人型ロボットが登場するのも時間の問題かもしれない。

おそらくそこで、「人間が同じ人間に向ける愛と、人間そっくりの対象に向ける愛とは、まったく同じなのか?」という問いが浮上してくるだろう。

『A.I.』(スティーブン・スピルバーグ監督、2001)は、リアルな家庭用人型ロボットを主人公に据えた初めてのSF映画である。

「ディープラーニング革命」が起こった2012年より11年前の当時、人工知能はまだかなり限定的で、一般人が触れるレベルでは検索エンジンのランキングアルゴリズムや音声認識といったところであり、その精度も低かった。日本ではソニーのペット型ロボットAIBOや本田技研の二足歩行ロボットASIMOが登場して間もないこの時代に、『A.I.』は来るべき未来のリアリティを持つというよりは、ほとんどファンタジーとして捉えられていたように思う。当時の宣伝を思い出してみると「愛と感動の母子もの」というムードが打ち出されており、実際ベースとされているのが童話「ピノキオ」ということもあって、スピルバーグのヒューマニズム色の濃い作品という受け取られ方だった。

しかしAIが社会に実装され私たちの生活に入り込んできた今、この作品を再見すると、人間は、技術の進歩によって自らが生み出したものが「何」であるかを、本当には知らないのでは‥‥という感慨を抱かされる。

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文=大野左紀子

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