新興のIT企業への投資でも慧眼が光るアジア屈指の大富豪・李嘉誠。
その見事なまでの目利きぶりにはふたりの女性投資家の存在があった。
スカイプやフェイスブック、スポティファイ、そしてサムリー……。今や世界有数のIT 企業に成長したこれらの会社にはある共通点があった。それは、「香港出身のふたり組の女性」が投資しているという点だ。女性たちの名は、周凱旋(52)と張培薇(63)。香港のベンチャー投資企業「ホライゾンズ・ベンチャーズ」の共同創業者である。
(中略)ホライゾンズが今までに投資してきた約50社の『破壊的イノベーション』企業は、さまざまな難題に対して現実的な価格で解決策を提示できる、ひいては世界に大きな変化をもたらす―。そのような企業ばかりだ。
ホライゾンズの創業者たちは、4半世紀以上にわたって同じ職場で働いてきた。
「張培薇と周凱旋はすべての取引で緊密に連携しています。よき友達同士で、まるで家族のようですね」と、同社の広報は話す。彼女たちは、8人の投資マネジャーと10人で構成されたデジタル部門の社員と一緒に投資先企業を支援している。
ホライゾンズの創業前にもふたりは李と何度か仕事をともにしている。1990年代初めには、広大な高級複合施設となった北京東方広場の開発に携わり、世界初の人民建て不動産投資信託(REIT)の登場に一役買った。創業2年前の2000年には「ドットコム買収」の火花が飛ぶなか、現在Tomグループとして知られる中国インターネット新興企業の株式上場を果たしたりした。
ホライゾンズの投資モデルは他のベンチャー投資会社とは異なり、資金をプールしてから投資するわけではない。投資案件はひとつずつ検討され、ふたりが李嘉誠に投資に加わるよう声をかけるかたちだという。
(中略)李が投資しているという事実は、新興企業への投資を決める際の「保証」と見られている。05年、ホライゾンズはインターネット電話サービス「スカイプ」に投資を決めた。オークションサイト「イーベイ」がスカイプを25億ドルで買収する1年前のことである。
最大の成功は、今では15億ドル近くの高値をつけているフェイスブックへの投資だろう。ホライゾンズのふたりが直に李嘉誠に出資するようプレゼンテーションをしたという。
李嘉誠基金会は、中国とイスラエル間の知識移転を促すため、テクニオン-イスラエル工科大学へ1.3億ドルの寄付をするなどで利益を還元している。同大学にとっては、ホライゾンズを通じて投資している李が最大の外国人投資家となっている。
他にもホライゾンズは、イスラエルの医療会社「メディカル・リサーチ」にも投資している。同社では、独自のアルゴリズムに基づいて医療データを解析し、結腸、直腸がんなどの疾病のリスクレベルを評価し、医師の診断や治療を手助けをしている。
投資先との守秘義務もあり、ホライゾンズは利益率を明かすようなことはしない。それでも広報は「大変満足な数字です」と語る。そして、それは疑うべくもない。