バーニーはUniCreditのデータ部門エグゼクティブで、金融サービス、デジタルバンキング、AI、データモダナイゼーションプラットフォームに関する専門知識を持つ。
ソフトウェアアーキテクチャは過去30年間で大きく進化してきた。当初は集中型サーバー上で動作するモノリシックなアプリケーションから始まり、モジュール性とスケーラビリティを向上させるマルチティアアーキテクチャへと進化した。システムの複雑さが増すにつれ、疎結合と再利用性を重視したサービス指向およびコンポーネントベースのアーキテクチャが登場した。2000年代初頭にはアジャイル手法が現れ、反復的な開発とチームコラボレーションの強化が可能になった。
現在、アジャイルは組織の中心となり、継続的デリバリーと適応性を推進している。クラウド導入は戦略的マルチクラウドとSaaS統合へと成熟し、特に金融機関では柔軟性とコンプライアンスのバランスを取るためにオープンソースとカスタムプラットフォームを組み合わせている。
人工知能は現在、協調型エージェントシステムが開発を再形成する中で重要な役割を果たしている。テクノロジー環境は、最先端のイノベーションと従来型のレガシーシステムという二極化が進んでいる。アーキテクトはこの分断を乗り越え、技術的負債とビジネス・組織目標のバランスを取る必要がある。
アーキテクチャパラダイムの転換：モノリシックからモジュラーへ
10年以上前に設計された従来の3層アーキテクチャは、ますますレガシーとみなされるようになっている。業界は現在、より軽量でモジュラー性の高いコアプラットフォーム（スマートコントラクトやシンレジャーを特徴とする）へと移行しており、補助的なソリューションをシームレスに統合できるようになっている。
しかし、これらの最新の進歩と並行して、別の現実も存在する：トランザクション処理の約70%は依然としてメインフレームシステムに依存している。最新技術は特定のビジネス機能において進歩をもたらしたが、この根強いレガシーインフラは、統合、データガバナンス、品質などの分野で大きなモダナイゼーションの課題を提示している。
この状況は、1700年代後半から1800年代初頭に機械がイギリスの綿紡績産業に導入された産業革命初期を思い起こさせる。当初、工場主は工場のワークフローを再編成せずに、人間の紡績工を機械で直接置き換えようとしたが、生産性の向上はわずかだった。
段階的なイノベーション、組立ラインの再編成、大規模生産の採用を通じてのみ、大幅な生産性向上が実現された。設計の観点から見ると、この時代は規模やアプローチの変化だけでなく、生産プロセス全体の基本的な「配線」の変化も象徴している。
現代のSDLCにおけるアーキテクチャの役割の変化
現在のソフトウェア開発ライフサイクル（SDLC）では、アーキテクチャの役割は、急速なペースには戦略的すぎる、あるいは絶えず進化するテクノロジー環境では無関係だとして軽視されることがある。しかし、アーキテクチャの基本原則は変わっていない。
変化したのは物理的なアーキテクチャ、つまり提供されるソリューションの基盤となるツールとテクノロジーであり、現在ではそれらが非常に急速に進化するため、課題はスピードよりもSDLC自体の基本的なアプローチにある。
これは単に新しいテクノロジーを選択したり、ペースを維持したりする問題ではなく、アプリケーションの構築方法や相互接続方法を根本的に再考することである。必要なアーキテクチャ思考は、単に「より大きく」「より速く」「より良く」ではなく、根本的に異なるものでなければならない。
現代のエンタープライズアーキテクチャのための3つのアプローチ
適切に構築されたアーキテクチャ機能は、複雑なIT環境をレガシーシステム、モダンプラットフォーム、移行統合という3つの重要領域に分類し、安定性、イノベーション、相互運用性のバランスを取るためにそれぞれに合わせたアプローチを必要とする。
1. レガシーシステム：重要なワークロードはしばしばメインフレームやモノリシックなプラットフォーム上で実行される。焦点は、最小限の資本支出で稼働時間と安定性を確保しながら、段階的なイノベーションや段階的な機能抽出を管理することにある。アーキテクトはリスクを管理しながら、潜在的なモダナイゼーションに備える必要がある。
2. モダンプラットフォーム：これには、デジタルファーストのユーザーと運用ワークフロー向けの、スケーラブルでモジュラー、クラウドネイティブ、AI拡張型のソリューションが含まれる。投資の焦点は、ブロックチェーンやスマートコントラクトなどの新興テクノロジーを統合する、柔軟で適切に管理され、将来性のあるプラットフォームの構築にある。
3. 移行統合：このゾーンは、統合、データの一貫性、相互運用性を重視するソリューションを通じて、レガシーシステムとモダンシステムを橋渡しする。目標は、完全なモダナイゼーションが達成されるまで、スムーズなデータフロー、ガバナンス、運用の継続性を確保する明確なモダナイゼーションロードマップを開発することである。
アーキテクチャ・アズ・コードを3つのアプローチに統合する
アーキテクチャ・アズ・コード（AaC）は、アーキテクチャコンポーネント、ルール、構成を実行可能でバージョン管理されたコードとして定義することで、企業がソフトウェアアーキテクチャを管理・進化させる方法を再形成している。この手法により、アーキテクチャは静的な成果物から、アプリケーション開発と共に継続的に進化する生きた自動化モデルへと変わる。
3つのアプローチによるアーキテクチャ機能の中で、AaCは重要な役割を果たす：
• レガシー環境では、AaCは構成管理を自動化し安定した統合ポイントを確保することで段階的なモダナイゼーションをサポートし、稼働時間を維持しながらリスクを軽減する。
• モダン環境では、AaCはコード駆動のアーキテクチャ検証、自動化されたガバナンス、開発パイプラインに組み込まれた継続的なコンプライアンスを通じて、高度にモジュラーでスケーラブル、かつ管理されたプラットフォームを実現する。
• 移行統合層では、AaCはインターフェース、データフロー、依存関係をコード化・自動化し、トレーサビリティと整合性を持ってレガシーシステムとモダンシステム間のシームレスな相互運用性を確保する。
アーキテクチャ・アズ・コードを採用することで、組織はアーキテクチャビジョンと実装のギャップを埋め、俊敏性を高め、技術的負債を削減し、人間のエンジニアとAIエージェントの両方を含む協調的なイノベーションを可能にする。
大企業におけるアーキテクチャ機能の運用化
アーキテクチャの運用化には、企業文化に応じて集中化と分散化のバランスを取りながら、原則が中央で定義され実施されることを確保する必要がある。ビジネスおよび技術的能力の明確で詳細な定義と、正確な技術マッピングを組み合わせることで、曖昧さを排除し一貫性を実現できる。
アーキテクチャをアジャイル、DevOps、運用ワークフローに組み込むことで、継続的なガバナンスと自動化されたコンプライアンスが促進され、戦略が測定可能な成果に変わる。AaCはモデリングと検証を自動化することでこれを進め、レガシー、モダン、移行ドメイン全体でビジョンと実行を橋渡しし、アーキテクチャをイノベーションと運用の卓越性の重要な推進力に変える。
まとめ
2025年以降、ソフトウェアエンジニアリングとエンタープライズアーキテクチャは、自動化、モジュール性、インテリジェントな協働を受け入れる方向に進化している。テクノロジー環境の二極化が進み、レガシーコアとモダンなクラウドネイティブエコシステムが並存する状況では、安定性と俊敏性のバランスを取る差別化されたアーキテクチャ戦略が求められる。
アーキテクチャ・アズ・コードのような新たなパラダイムは、戦略と実行の境界を曖昧にし、アーキテクチャをCI/CDパイプラインに深く組み込み、AI支援によるイノベーションを強化し続けるだろう。エンタープライズアーキテクトは、クラウドネイティブ、AI拡張、ブロックチェーン対応技術を取り入れた、適応性があり、組み合わせ可能で、適切に管理されたプラットフォームの設計において重要な役割を果たすだろう。
この環境で成功するには、レガシーシステムの運用上の現実を尊重しながら、統合、自動化、継続的なモダナイゼーションを重視する新しいアーキテクチャのマインドセットが必要である。このバランスをマスターした企業は、ますますダイナミックになるデジタル世界で俊敏性、回復力、持続的なビジネス価値を引き出すことができる。
