【説明がうまい人】
上司「(相手は野球が好きだったな)この新しい制度、少し複雑に感じるかもしれないけど、一言で言うと、『プロ野球選手の年俸交渉』をイメージしてもらうとわかりやすいと思うんだ」
部下「プロ野球、ですか?」
上司「そう。君は野球が好きだったよね。たとえるとホームランを30本打った(個人の目標達成)としても、チームが最下位だったら(チームへの貢献度が低い)、最高の評価は得られない。逆に、個人の成績はそこそこでも、チームを優勝に導く決定的な仕事をした選手は、高く評価される。今回の新制度は、それと同じ考え方なんだ」
いかがでしょうか。後者の説明は、聞き手の興味(野球)という土俵の上で、1つのブレもない比喩を使いきっています。だからこそ、複雑な制度の本質が、すっと頭に入ってくるのです。
説明がうまい人が頭においているのは、「この聞き手にとって、最もイメージが湧く比喩は何か?」という問いです。その説明をすることが事前にわかっているのであれば、あらかじめ相手に合わせて準備しておくこともあります。
比喩は、未知の概念を「知っていること」に翻訳する
なぜ、比喩が、それほどまでに強力なのでしょうか。
それは、優れた比喩が、未知の概念を、すでに持っている知識へと転換させる「魔法の翻訳機」として機能するからです。
認知言語学に「概念メタファー理論」というものがあります(Lakoff et al., 1980)。「人生は旅である」のように、私たちはある抽象的な事柄を、別の具体的な事柄を通して理解しています。
このとき、説明がうまい人は、相手の世界にある言葉で比喩を作ります。相手が最も理解しやすい概念メタファーを戦略的に選んで提示しているのです。
説明がうまくない人は、自分の世界にある言葉で比喩を作ります。自分がRPGや麻雀が好きだから、その言葉でたとえてしまう。しかし、相手がその世界を知らなければ、翻訳は機能しません。


