2025.12.26 09:00

世界の自動車市場で躍進する中国 経済力を超え地政学的影響力も拡大へ

中国江蘇省太倉港で、船積み待機中の電気自動車。2024年4月19日撮影(Zhang Congyu/VCG via Getty Images)

中国江蘇省太倉港で、船積み待機中の電気自動車。2024年4月19日撮影(Zhang Congyu/VCG via Getty Images)

中国は2020年、約100万台の自動車を輸出した。この数は2025年までに800万台に達すると予測されており、これにより中国は世界最大の自動車製造国かつ輸出国としての地位を確固たるものにする。

英国では、中国の自動車メーカーは既に市場の13%を占めており、2026年までに30%に達すると見込まれている。特に注目すべきは、中国が電気自動車(EV)分野を支配している一方で、同国の自動車輸出の7割は依然として従来のガソリン車である点だ。これは、コスト効率と市場規模の両面で中国が二重の優位性を保っていることを浮き彫りにしている。

この成功は、同国で事業を展開する国際的な自動車メーカーにとって、多大な代償を伴うものとなった。米自動車大手ゼネラルモーターズ(GM)でかつて幹部を務めていたマイケル・ダンによると、同社の市場占有率は2020年の64%から25年には31%へと急落した。特に深刻な打撃を受けているのはドイツ企業だが、米企業も勢いを失っている。中国企業がEVの導入を積極的に進めた一方で、米企業は後れを取った。その結果、中国の自動車メーカーは現在、国内市場を支配するだけでなく、大量生産と低コスト車両で国際市場に進出する態勢を整えている。米国の優位性は自国内のみに限られることになる(筆者は全米のEV産業の振興を支援する非営利団体の理事を務めている)。

その影響は経済を超えた領域にまで及ぶ。中国の自動車産業の台頭は、同国に地政学的な影響力をもたらし、世界的な影響力と支配力を強化するだろう。だが、この話は中国にとって必ずしも良いことばかりではない。2つの構造的な課題が迫っている。

● 低価格競争 中国の自動車メーカーは、太陽光パネルや鉄鋼でかつて見られたやり方と同様、赤字販売で積極的に競争している。これは消費者には利益をもたらす一方、製造業者に負債を負わせ、長期的な収益性を損なう。中国には現在約100の自動車ブランドが存在するが、利益を上げているのはごく一部に過ぎない。この重商主義的戦略は、持続可能性より国際市場占有率を優先する。業界はいずれ、別の種類の自動車事故の危険性に直面するだろう。

● 貿易戦争 中国のやり方は、米国、欧州、日本、韓国との緊張を悪化させる可能性がある。いずれの国も自国市場を簡単に譲ることはないだろう。中国企業は協調的な成長を追求するより対立的な戦略に固執しており、それが政治的な反発や報復的な貿易措置の可能性を高めている。

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翻訳・編集=安藤清香

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