メリンダ・フレンチ・ゲイツは、2024年にゲイツ財団を離れた後、女性支援に特化した自身の財団であるピボタル・フィランソロピーズに活動の軸足を移している。
メリンダ・ゲイツがゲイツ財団を辞任してから1年半が経過したが、新たな税務申告書によって、彼女と元夫であるビル・ゲイツが、同財団に対する異例の寄付構造を選択していたことが明らかになった。
メリンダ・ゲイツは2024年1月、同年6月に退任する5カ月前に、ゲイツ財団に対し5億200万ドル(約783億円)を寄付した。これは、2000年に元夫と共同設立した同財団に対する、彼女にとって最後の寄付になる可能性が高い。
一方、ゲイツの寄付額は、それと比べるとごく少額のものだった。同財団を資金面で支える信託に9400万ドル(約148億円)、そして財団そのものに1000万ドル(約15億6000万円)を寄付したにすぎない。これは近年、特に2022年における寄付額と比べると大幅に少ない。2022年には、彼の201億ドル(約3兆1400億円)の寄付が、慈善史上でも最大級の寄付のひとつとなっていた。
比較的少額に見えるこの寄付額の原因は、彼が別の場所で巨額の小切手を書いていたためかもしれない。申告書によると、ゲイツは2024年10月、公開株式の寄付を通じて、メリンダ・ゲイツの団体であるピボタル・フィランソロピーズに79億ドル(約1兆2300億円)を寄付している。ピボタルの広報担当者はフォーブスに対し、この寄付は、メリンダ・ゲイツがゲイツ財団からの退任を発表した際に記した「女性と家族のための活動」に対し、ビル・ゲイツが125億ドル(約1兆9500億円)を拠出するという約束の一部であることを確認した。ゲイツが、それ以前にピボタルへ寄付したことはなかった。ビル・ゲイツの広報担当者は、コメント要請に応じなかった。
メリンダ・ゲイツは2015年にピボタルを設立し、2022年にはその傘下の私的財団を立ち上げた。同団体の目的は、リプロダクティブ・ライツ(性と生殖に関する健康と権利)やその他の健康問題への取り組みなどを通じて、世界中の女性のエンパワーメントを推進することであり、彼女がゲイツ財団を離れて以降の主たる活動対象となっている。現在、293億ドル(約4兆5700億円)の資産を持つメリンダ・ゲイツは、2024年時点で、みずからピボタルへ直接寄付はしていない。
2人は27年間の結婚生活の末、2021年に離婚した。それ以降、メリンダ・ゲイツは独立した慈善家としての存在感を高め、これまでに推定36億ドル(約5600億円)を寄付してきた。フォーブスの推計によれば、彼女と元夫は生涯で合計520億ドル(約8兆1100億円)超を寄付している。
5月、ゲイツは2045年12月31日までに自身の資産の大半を寄付し、同日をもってゲイツ財団を閉鎖する意向を発表した。彼の推定資産が1037億ドル(約16兆1800億円)であることを踏まえると、それを実現するためには、今後は寄付額を大幅に拡大する必要があるとみられる。つまり2024年は、同財団がビル・ゲイツから「たった」億ドル単位の寄付額を受け取る、最後の年になる可能性がある。



