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2025.12.26 17:45

個人開発のアプリが「世界のノート」へ。Goodnotes経営チームが考えるAI戦略と日本の「書く文化」

2025年10月10日、都内で行われたデジタルノートアプリ「Goodnotes」の公開インタビューで語る、同社・創業者兼CEOのスティーブン・チャン(左から2人目) Kohichi Ogasahara for Goodnotes

――私もスペリングには苦労するのでよくわかります。では、ミンさんのお気に入りは? 

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ミン:入社したばかりの頃は、なげなわツール(Lasso Tool)がお気に入りでした。魔法のように思えたんです。選んだアイテムを移動、リサイズ、回転させたり、色を変えたり。テキストに変換することだってできますよね。2023年には、こすって消去(Scribble to Erase)をリリースしました。わざわざ消しゴムツールに切り替えなくても、消したい部分をこするだけで消せる。これが今の私の一番のお気に入りです。本当に直感的で自然に使えるんですよ。

「AIは自分の代わりにアイデアを生み出すものではなく、すでにもっているインサイトの中からパターンを見つけ出す手助けをしてくれるもの」(シュウ・ティン・フォン)  Kohichi Ogasahara for Goodnotes
「AIは自分の代わりにアイデアを生み出すものではなく、すでにもっているインサイトの中からパターンを見つけ出す手助けをしてくれるもの」(シュウ・ティン・フォン) Kohichi Ogasahara for Goodnotes

――シュウ・ティンさんはいかがでしょう? 

シュウ・ティン:一つに絞るのは難しいですね。スティーブンが二つ挙げたので、私も二つ選びます。一つ目はホワイトボードに変換です。これは、インポートしたノートやPDFをホワイトボード化できる機能です。個々のページをホワイトボード内に配置して、無限のスペースで注釈を書き込めます。私はAIや機械学習(ML)に関する学術論文をよく読むのですが、自分の考えを書き込むのにノートの余白が足りないことがよくあります。でも、この無限キャンバスがあれば、隅っこにちょっとしたエッセイが書けるくらい広いスペースが使えるので、重宝しています。

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二つ目は、Goodnotes AI(ミーティングアシスタント機能)、特に「ライブ要約」機能です。今こうしてお話ししている間にも、AIが重要なポイントをリアルタイムで要約してくれています。私は一日の大半を会議で過ごすのですが、たまに意識が別のところへ飛んでしまうこともあります(笑)。マルチタスクで多忙な会議中も、今どんな会話をしているのかをすぐに把握できるのはとても重要です。後から要約を振り返って詳細を確認できるので、本当に助かっています。

――それは面白い視点ですね。意識がふと別のところへ向かった時に、素晴らしいアイデアが浮かぶこともありますから。最初は完璧なアイデアではなくても、そこから進化していくかもしれません。そんな「ふとした思考」も決して過小評価できませんよね。

シュウ・ティン:そうなんですよ! ですから、私はこの機能を会議だけで使っているわけではありません。自分の思考プロセスを観察するために、AIに向かって独り言を話すこともあります。思考は直線的には進みませんからね。バラバラな思考の中からパターンをつなぎ合わせるためのツールが必要で、それこそがAIの得意分野なんです。AIは自分の代わりにアイデアを生み出すものではなく、すでにもっているインサイト(洞察)の中からパターンを見つけ出す手助けをしてくれるものなのです。

文 = 井関庸介

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