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2025.12.26 17:45

個人開発のアプリが「世界のノート」へ。Goodnotes経営チームが考えるAI戦略と日本の「書く文化」

2025年10月10日、都内で行われたデジタルノートアプリ「Goodnotes」の公開インタビューで語る、同社・創業者兼CEOのスティーブン・チャン(左から2人目) Kohichi Ogasahara for Goodnotes

――それは多いですね。営業チームも作っていく予定ですか?

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ミン:小規模なチームはありますが、現在はすべてインバウンド(自然流入)です。ユーザーとの最大の接点はApp Storeで、ユーザーはアプリをダウンロードして使い始めます。この「プロダクト・レッド・グロース(広告ではなく製品の良さでユーザーが広まるモデル)」のおかげで、販売やマーケティングのコストを抑え、収益の大部分を製品の改善に投資できています。

TikTokではGoodnotesに関連する投稿が20億回以上再生されていると聞いて驚きましたよ。TikTokは猫の動画やダンスのためのものだと思っていましたが、今では生産性やGoodnotesの活用法を語る場所になっているんです。YouTubeやInstagramのクリエイターコミュニティが、私たちの成長を支えてくれています。

――スティーブンさん、もう一つの大きな決断について伺いたいと思います。一括払いの「買い切り」モデルから、サブスクリプション(定額制)サービスへ移行されましたね。大きなコミュニティを抱える中での移行は勇気がいる決断だったと思いますが、その背景にある考えを教えてください。

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スティーブン:重要な質問です。数年前、ユーザーにより良い価値を提供し続ける方法を考えた際、共同作業のサポートやAIなどの機能にはサーバーコストが継続的に発生するという事態に直面しました。買い切りモデルのままだと、常に「新規ユーザー」を獲得し続けなければならず、既存ユーザーを大切にするインセンティブが働きにくいという課題もありました。

そこで、手頃な価格の年間サブスクリプションを導入したのです。これにより、ユーザーに継続して利用いただけるよう、常に最高の体験を提供し続ける責任が生まれます。より持続可能なモデルだと考えています。一方で、私たちはユーザーに選択肢を残したいと考えました。他社とは異なり、サーバーコストがかからない範囲での「一括払い」か、すべての機能が使える「年間サブスクリプション」か、ユーザーが選べるようにしています。

――AIなどを導入すればコストも上がりますし、サブスクリプションは避けては通れない選択肢ですね。Goodnotesはブートストラップ(自己資金)で黒字経営を続けていますが、今後外部からの資金調達を検討する可能性はありますか?

スティーブン:初日から黒字で、自己資金で運営できているのは幸運なことです。だからこそ、短期的な利益ではなく、長期的なビジョンを優先できています。現時点で直ちに資金調達をする計画はありませんが、製品をより良くするために資本が必要だと判断すれば、2、3年後には変わるかもしれません。その際は、私たちのビジョンに共感し、ユーザーを第一に考える投資家を自分たちで選んでいきたいと考えています。

「情熱」がミン・トランCOO(左)採用の決め手だったと振り返るスティーブン・チャンCEO(右)。トランCOOも「最初からお互いのスキルが補完し合える、最高の相性」だと語る  Kohichi Ogasahara for Goodnotes
「情熱」がミン・トランCOO(左)採用の決め手だったと振り返るスティーブン・チャンCEO(右)。トランCOOも「最初からお互いのスキルが補完し合える、最高の相性」だと語る Kohichi Ogasahara for Goodnotes
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文 = 井関庸介

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