問題意識や課題から起業した――。起業家の多くはそう語るが、極めて個人的な体験、それも日常生活での困りごとがきっかけで会社を立ち上げ、それをグローバル企業まで育て上げた人は限られている。その一人が、デジタルノートアプリ「Goodnotes」創業者兼CEOのスティーブン・チャンである。
2011年創業のGoodnotesは世界で2500万人以上のユーザーを抱え、教育や建築、医療、法律など幅広い分野で活用されている。創業当初から日本のユーザーに高い人気を誇る同社は、このほど日本市場に本格的に進出。2025年10月10日、都内で戦略発表会が開催された。その一環で、メディアやインフルエンサーを前に、チャンCEOのほか、ミン・トランCOO、そしてAI製品リードのシュウ・ティン・フォンがForbes JAPANの公開インタビューに応じた。
チャンCEOがGoodnotesを立ち上げた経緯とは。スタートアップからグローバル企業へ成長する過程で経営はどう変わったか。ビジネスモデルの転換や日本市場の特性、AIへのアプローチなど、Goodnotesの経営チームが多様なテーマについて答えたインタビューを届けたい(編集部註:英語でのインタビューを翻訳しています)。
――皆さん、お集まりいただきありがとうございます。本日はGoodnotes創業の経緯と事業、そして経営チームがこれまでに得たインサイト(知見)について伺えればと思います。自己紹介から始めましょう。まずは、Goodnotesの創業者兼CEO、スティーブン・チャンさんからお願いします。
スティーブン・チャン(以下、スティーブン):私の生まれ育ちは香港ですが、オーストラリアの大学に進学しました。その頃に初代iPadが発売されると発売日に購入。アプリ「GoodNotes」を開発したんです(編集部註:現在の社名と製品名は「Goodnotes」)。それが自分の人生をこれほど大きく変えることになるとは、当時は想像もしていませんでした。
当時の私は、大量の紙のノートや教科書を使っている学生でした。使う紙の量を減らして、完全にペーパーレス化したいと考えたのが起業のきっかけです。これほど多くのユーザーに使っていただけるようになるとは思いもしませんでした。開発当初から日本のユーザーの方々はGoodnotesをとても愛してくださったんです。それから約15年間、続けてきました。
最初の5年間は私一人の個人プロジェクトでしたが、徐々にチームを拡大し、現在では世界で最も人気のあるノートアプリの一つになりました。今は英ロンドンを拠点に、ヨーロッパとアジアをまたぐ才能豊かなグローバルチームと共に働いています。世界中の何百万人ものユーザーに愛される製品をもてたことを、いつも幸運に感じています。



