AI以外のさまざまな分野でも世界各地で新たな富豪が誕生
ビリオネア・バブルはAI分野にとどまらない。6月には、ステーブルコイン「USDC」を手がける暗号資産企業のCircle(サークル)が、ステーブルコイン発行体として初めて株式公開を果たした。この大型IPOによって、共同創業者のジェレミー・アレアはビリオネアの仲間入りをした。
翌7月には、ディラン・フィールドが率いるデザインソフトウエア企業Figma(フィグマ)が上場し、フィールドは数十億ドル(数千億円)規模の資産を持つマルチビリオネアとなった。共同創業者のエバン・ウォレスも、新たにビリオネアとなった。
防弾チョッキや爆発物処理用スーツなどを移民・関税執行局(ICE)を含む顧客向けに製造するCadre Holdings(キャドレ・ホールディングス)の株価も、米国と欧州における防衛支出の拡大を追い風に上昇し、CEOのウォーレン・カンダースをビリオネアへと押し上げた。携帯電話に直接ブロードバンド通信を届ける衛星網の構築で、スペースXと競り合うAST SpaceMobile(ASTスペースモバイル)の株価は300%急騰し、創業者のアベル・アベリャンはビリオネアとなった。
このほかにも、ソーシャルメディア大手Reddit(レディット)の共同創業者スティーブ・ハフマンは事業の成功で巨額の富を築き、ハリウッドの巨匠ジェームズ・キャメロンは映画業界での成功により資産を拡大した。テニス界のレジェンドであるロジャー・フェデラーも、2025年新たにビリオネアのリストに加わった。
この1年間で新たに誕生したビリオネアの資産の総額は約136.7兆円
この1年間で新たに誕生したビリオネアの資産の総額は8760億ドル(約136.7兆円)に達している。これは、世界全体のビリオネアの資産の約5%に相当する。2025年の新顔のビリオネアの約40%は米国人だが、その居住国は計32カ国に広がった。内訳を見ると、中国人が35人、インド人が15人、ロシア人が15人を占めている。
ドイツでは、一般用医薬品やサプリメント企業を次々と立ち上げて売却してきたクレメンス・フィッシャーが富を築き、現在はオピオイドに代わる大麻由来の鎮痛薬の開発に取り組んでいる。アルバニアでは2025年、不動産・小売大手の富豪サミル・マネが同国初のビリオネアとなった。マネは1990年代初頭に共産主義体制を逃れてオーストリアに移住し、最初の財を築いた後、帰国して首都ティラナ郊外に同国初のショッピングモールを開業した。
自力で富を築く若者が増える一方、相続によってリスト入りするケースも続く
新顔のビリオネアのうち、約3分の2は自ら事業を興して資産を築いた。その中には、30歳未満のビリオネアが11人含まれており、世界全体の30歳未満の自力で富を築いたビリオネアの数は、過去最多の13人となった。一方で、相続によってビリオネアとなった人々もいる。たとえば、5月に亡くなったNFLチーム「インディアナポリス・コルツ」のオーナーだったジム・アーセイの3人の娘や、9月に亡くなったイタリアのファッションデザイナー、ジョルジオ・アルマーニの5人の相続人、医療用品大手Medline(メドライン)の2025年最大規模のIPOの背後にいた一族の5人が、相続を通じてビリオネアになった。
そして、こうして巨万の富を手にした人々は、その後も富を維持する傾向が強い。2025年は多くの新顔が加わったとはいえ、現在のビリオネアの約85%は年初の時点からビリオネアだった。その5分の4は、1年前と同等か、それ以上の資産を保ったまま2026年を迎える見通しだ。世界のビリオネアたちは、2026年も実り多い1年を迎える態勢を整えている。


