大規模言語モデルの開発やデータセンターへの投資が、新たな富を生み出す
AIブームに乗って2025年初めてビリオネアの仲間入りを果たした新顔が相次いでいる。そのなかには、大規模言語モデル(LLM)の開発に取り組む起業家もいる。2023年にDeepSeekを立ち上げた中国の梁文峰(リャン・ウェンフォン)は、同社のR1モデルが「低コストながらOpenAIのChatGPTに匹敵する性能を持つ」として世界的な注目を集めたことで、2025年1月にビリオネアとなった。
Anthropicの評価額が急騰、元OpenAI社員7人がビリオネアに
OpenAIを離れてAI大手Anthropic(アンソロピック)を立ち上げた元社員7人も、新たにビリオネアの仲間入りを果たしている。チャットボット「Claude」を手がけるAnthropicの評価額は、この1年で180億ドル(約2.8兆円)から615億ドル(約9.6兆円)、1830億ドル(約28.5兆円)へと急拡大した。
AIインフラを支えるAstera LabsやCoreWeave、上場やGPUレンタルで成長
AIブームを「支える側」として富を築いた人々もいる。韓国の無名に近かったプリント基板メーカー、ISU Petasys(イスペテシス)の株価は2025年に入って360%以上上昇し、会長のキム・サンボムは新たにビリオネアとなった。エヌビディアやAMDの元幹部4人も、中国で半導体企業を共同創業し、中国版のエヌビディアやAMDを目指す中で、新たな中国人ビリオネアとなった。
ジテンドラ・モハンとサンジェイ・ガジェンドラは2017年、AIや機械学習の進化に通信技術が追いついていないことに気づき、カリフォルニア州を拠点とするAstera Labs(アステララボ)を共同創業した。同社はデータセンター向けのネットワーキング技術を手がけている。同社の株価は、2024年の上場以降に140%上昇し、2人はいずれもビリオネアの仲間入りを果たした。
CoreWeave(コアウィーブ)を率いる3人の新たなビリオネアは、米国と欧州にまたがる30超のデータセンターで、約25万基のGPUをAI企業に貸し出す巨大な計算資源の帝国を築き上げた。同社株は、3月のIPO以降、2倍以上に跳ね上がっている。
テキサス州のパンハンドル地域でAI企業向けの巨大データセンターを建設しているFermi America(フェルミ・アメリカ)も注目を集めた。Fermiは10月、評価額125億ドル(約2兆円)で上場し、共同創業者のトビー・ノイゲバウアーとグリフィン・ペリーをビリオネアに押し上げた。ペリーの父で元テキサス州知事、元米エネルギー長官のリック・ペリーも、資産が1億ドル(約156億円)を超えるセンチミリオネアとなった。
もっとも、Fermiはこれまで1ドルの売上も計上しておらず、建設の第1段階が完了するまでには少なくとも1年を要する見通しだ。上場後、株価は70%下落し、グリフィン・ペリーはビリオネアの座から外れたが、同社の評価額は依然として50億ドル(約7800億円)を超えており、ノイゲバウアーはビリオネアの地位を保ち続けている。
このほかにも、データセンター向けの配線ケーブルやバイブ・コーディング、データラベリング、AIによるカスタマーサービス、音声クローン技術、AIを活用したデーティングゲームといった分野で成功を収め、ビリオネアの仲間入りを果たしたAI業界の新興勢力が次々と現れている。


