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2025.12.30 10:30

世界で340人以上が「新ビリオネア」になった2025年、そのバブルの内幕

イーロン・マスク(Frederic Legrand - COMEO/Shutterstock.com)

トランプ政権への多額の寄付を行い、閣僚として入閣するビリオネアも

こうして生まれた莫大な富は、巨大な権力に直結している。2024年の米大統領選では、約135人のビリオネアが資金を投入し、その多くがこの1年、自身もビリオネアであるドナルド・トランプを支える陣営に並んだ。彼らは大統領就任式にも数百万ドル(数億円)を寄付した。その式典では、ベゾス、ザッカーバーグ、ティム・クック、スンダー・ピチャイといったビリオネアが、通常であれば大統領の家族や歴代大統領、政府高官らに割り当てられる特等の席を占めていた。

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彼らは、ホワイトハウスの舞踏会場建設プロジェクトにも追加で数百万ドル(数億円を拠出した。そのなかには、実際に閣僚として政権に加わった者もおり、内閣は米国史上最も裕福な陣容となった。12月17日には、ビリオネアのジャレッド・アイザックマンが正式に米航空宇宙局(NASA)長官に承認された。その前日には、巨額献金者として知られるビリオネアのミリアム・アデルソンが、「トランプが3期目を目指すなら、2億5000万ドル(約390億円)を出す」と冗談めかして語った。その1週間前には、農業分野で財を成したビリオネアのアンドレイ・バビシュが、チェコ共和国の首相に就任した。

こうした一連の動きは、今や米国に限らず、世界全体がこれまで以上に「ビリオネアの時代」に突入したことを示している。

ドナルド・トランプ大統領の就任式に出席したマーク・ザッカーバーグ、ジェフ・ベゾス、サンダー・ピチャイ、イーロン・マスクらビリオネアたち(Photo by Chip Somodevilla/Getty Images)
2025年1月20日、トランプ大統領の就任式に出席したマーク・ザッカーバーグ、ジェフ・ベゾス、サンダー・ピチャイ、イーロン・マスク(Photo by Chip Somodevilla/Getty Images)

イーロン・マスク、資産が7000億ドル(約109.2兆円)を突破

この勢いを最も明確に示すのが、イーロン・マスクの資産の動きだ。マスクの資産は、年初の時点で4210億ドル(約65.7兆円)だったが、そこから次々と記録を打ち立てた。10月には史上初めて5000億ドル(約78兆円)に到達し、12月15日には6000億ドル(約93.6兆円)、12月19日には7000億ドル(約109.2兆円)を突破した。背景にあるのは、マスクが率いる電気自動車(EV)メーカー、テスラの株価が約30%上昇し、ロケット開発企業スペースXの評価額がそれまでの2倍以上の8000億ドル(約124.8兆円)に膨らんだことだ。

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マスクの資産は、2025年の年初から12月22日までの間に3330億ドル(約51.9兆円)増加した。この増加額は、世界で2番目に裕福な人物であるグーグル共同創業者ラリー・ペイジの総資産2550億ドル(約39.8兆円)を上回る。言い換えれば、マスクは2025年の1年だけで、他の誰もが生涯を通じて築いたことのない規模の富を手にしたことになる。純資産が7540億ドル(約117.6兆円)に達するマスクは、世界のビリオネアランキングの最下層の富豪620人の資産の合計額を上回る富を保有している。

オラクルのラリー・エリソン、AI需要を背景に1日で資産約15兆6000億円を増やす

もっとも、2025年に「1日で最も資産を増やした人物」はマスクではない。その栄誉を9月10日に手にしたのがオラクル共同創業者ラリー・エリソンだった。この日、同社は四半期の売上高と利益の両方が市場予想を下回る結果だったにもかかわらず、AIブームを追い風とするクラウドインフラ事業の巨額な成長見通しを背景に、株価を36%急騰させた。オラクル株の約40%を保有するエリソンは、これを受け資産を約1000億ドル(約15.6兆円)増加させた。これは、1日あたりで史上最大の資産の伸び幅となった。

オラクル株はその後、40%下落したものの、エリソンは依然として推定2500億ドル(約39兆円)の資産を保有しており、2025年初めからの増加額は410億ドル(約6.4兆円)に達している。エリソンはこの1年、パラマウントとTikTokの買収を主導する動きにも関与していた。

アルファベットやエヌビディアの創業者も、AIモデルの投入や株価上昇で資産が増加

グーグルの共同創業者であるペイジとセルゲイ・ブリンも、2025年に合計1850億ドル(約28.9兆円)の資産を増やした。親会社アルファベットが、OpenAIやDeepSeekと競合する「Gemini 3」AIモデルを投入したことが追い風となった。一方、半導体大手エヌビディアの株価は2025年に33%上昇し、共同創業者ジェンスン・フアンの純資産は2025年だけで420億ドル(約6.6兆円)増加した。同社のビリオネアの数は一時的に6人にまで増えていた。投資大手ソフトバンクを世界有数のAI投資家へと導いてきた日本の実業家、孫正義も、2025年に資産を250億ドル(約3.9兆円)増やしている。

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翻訳=上田裕資

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