ファッション

2025.12.26 14:15

ドライヤー戦国時代から学ぶ、強みを活かしたビジネス商戦とは?

匠クラフト・ドライヤー

匠クラフト・ドライヤー

ここ10年、高機能を搭載したドライヤーが売れ続けている。これまでの5000円から2万円という価格帯から、様々な機能が付加されていき、各社が凌ぎを削り、次々と新製品がお目見えしていった。その結果、今や1台20万円の製品がリリースされるなど、世はドライヤー戦国時代へと突入した。

その背景には、年々高まる日本人の美意識のアップデートに加え、ナショナルブランドや、地方に拠点を持つ、もの創りにこだわる会社の高い工業技術にある。そんな2025年、競合会社がひしめくドライヤー市場で、この度、満を持してローンチしたのが12月中旬にお目見えした「匠クラフト・ドライヤー」だ。

ドライヤー戦国時代に「匠クラフト・ドライヤー」の発案者として参戦したのは、人気ヘア・サロン「PEEK-A–BOO」のクリエイティブ・ディレクター福井達真。美容師歴30年以上のキャリアを持ち、日本美容界を牽引してきた福井は、顧客とのカウンセリング前、瞬時に髪質と骨格を見極めるところから施術に入るという。つまり、髪型を決める時「髪質」が最も重要と考える福井に、昨今のドライヤー事情を伺った。

PEEK-A–BOO クリエイティブ・ディレクター 福井達真氏
PEEK-A–BOO クリエイティブ・ディレクター 福井達真氏

「最近の高価格帯ドライヤーは、付加価値を求める傾向にあります。これまでの単なる髪を乾かす家電から、肌のキメを整えてリフトアップ効果を狙うドライヤーまで、進化のスピードは驚くほど。一方で、SNSの拡散によって、消費者の購買意欲が年々高まり、『高額なドライヤーならば、良いのでは』という気分に陥っている現象も見受けられます」

4年間の歳月をかけて開発した「風」にこだわったドライヤー

それでは、福井はいま何故、「ドライヤーをイチから作ろう」と思ったのだろうか?

「元々は、ツインバードさんから、既存ドライヤーのプロダクト・アドバイザーとしてのオファーを受けていました。ところが、その時に、私が使用感や不備となり得る箇所を率直に指摘したところ『ならば、最初から福井さんが考える最高のドライヤーを創りませんか』と、ご提案をいただきました。そこで、自分自身に火がつきまして、今回のドライヤーを共創する事になったのです」。30年以上に及ぶサロンワークから得た経験から、徹底して「ヘアドライ」に着目したドライヤー創りをしたと語る。

多くの顧客を持つ福井にとって、よく言われる言葉がある。「福井さんにセットしてもらうと魔法にかかったみたいな髪質になる。でも、家に帰って自分で乾かすと、満足のいく仕上がりにならないのが悩み」という声だ。そのリアルな声は、今回の開発に大いに役立った。そして構想から実に4年もの歳月をかけて「匠クラフト・ドライヤー」は、誕生した。

勝負の決め手は、仕上がりと速乾性を実現した224通りの風

それでは、このドライヤーのこだわりとは、何だろうか?

「最大のポイントは、『風量を先端ノズルで変えられる点』にあります。温度は、55度、75度、90度と冷風の4段階。風速は、7段階です。風量にこだわったので、一番絞っている風幅は、僕の人差し指のサイズほど。赤ちゃんでも使用出来る、優しい風にこだわりました。ダブルイオン機能のオンやオフにより、自分に最適な風を224通りに組み合わせられる事で、仕上がりの良さと速乾性が実現出来たのです」

共同開発したパートナーの「ツインバード」は、刃物や金属加工工業が盛んな新潟県三条地域に本社を構える創業74年の老舗。メッキ加工会社から始業し、1984年からは本格的に家電事業に参入。難しい操作無しで、使いやすさを重視した「感動シンプル」を掲げた製品創りに定評がある。シンプルながら風にこだわった「匠クラフト・ドライヤー」には、「ツインバード」の企業理念である質実剛健な技術が活かされている。

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文=中村麻美

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