京都芸術大学は2026年4月、国内で初めてとなる通学不要・完全オンラインの音楽で取得できる学士課程「音楽コース」（正式名称は「通信教育部芸術学部文化コンテンツ創造学科音楽コース」）を開設する。
本コースは、入試に実技・筆記試験がなく、Web出願の際に300〜600字の志望理由を入力するだけで出願できるという。つまり「楽譜が読めない、楽器が弾けない」学生も入学できることになる。
本音楽コース開設に先立っての「体験会」にライターの田口みきこ氏（大学ではピアノ専攻）が参加した。以下はその体験レポートである。
京都芸術大学の理念──「入口の常識」を変える挑戦
子どもの頃からクラシック音楽に親しみ、大学でもピアノを専攻した筆者は、長い間「楽譜を読む」「理論を学ぶ」「技術を磨く」ことで初めて音楽が“つくれる”ようになると考えていた。よって、京都芸術大学・音楽コースが掲げる「楽譜が読めなくても、楽器が弾けなくても、音楽を学べる大学」という謳い文句には、これまで当たり前だと信じていた音楽観に刺激を受ける印象だった。
「完全オンラインでトップクリエイターから音楽を学べる、新しい音楽コースです」
という紹介とともに、2026年春にスタートする京都芸術大学・音楽コースの体験会が始まった。
本コースの根底には、大きく2つの考え方があるという。
まずは、「楽器が弾けなくても、楽譜が読めなくても音楽制作は始められる」。従来の音楽大学では、入学時点で十分な演奏技術や楽典の知識が求められ、受験準備のために専門塾へ通う学生も珍しくない。しかしDTM（デスクトップミュージック）の発展によって、「最初の一音を鳴らす」ハードルは劇的に下がった。自宅のPCから、指一本で音を並べることからでも音楽制作が始められる。初心者でも、「つくる」という行為そのものにすぐ触れられる時代になっている。
もうひとつの思想は、「音楽はつくって終わりではない。届けて初めて完成する」という視点だ。音楽は聴かれ、使われて初めて、その力が具体的なかたちを持つ。「どう届け、どう活かすか」までを含めて学ぶことが、現代の音楽教育には欠かせないと説明された。
この2つの思想を軸に、京都芸術大学の音楽コースは次のような学びを設計しているという。
・楽器経験がなくても入れる
・クラシック的な作曲・理論から入らなくてもよい
・作曲ソフト（DAW）を使った“現代的な音楽制作”を中心に学ぶ
・オンライン完結でも制作の評価が可能
・音楽を社会の中でどう活かすかまで扱う
長く積み上げ型の教育に身を置いてきた1人として、「クラシック音楽を中心とした従来の学び方だけが音楽の入口ではない」という説明に、これまでの常識を自らに問い直す結果となった。
