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2026.01.09 15:30

堀井翔太 二度目の起業 家計管理ワンバンクが描く未来

堀井翔太|スマートバンク

堀井翔太|スマートバンク

「1000万人が使うようなサービスをつくりたいという思いが起業家としての原動力。最初の起業で発明はできたが、結果的にその存在になれなかった悔しさがある。その目標を追い続けています」

堀井翔太は2012年にFablicを創業し、日本初のフリマアプリ「フリル」をローンチ。会員数を順調に伸ばしたが、後発のメルカリが大規模なプロモーションなどでユーザー数を急速に増やし、フリルは引き離された。堀井はその後、事業を売却してCEOを退任し、二度目の挑戦として19年にスマートバンクを創業。今、事業は大きく花を咲かせようとしている。

同社が展開するのは、家計簿アプリ「ワンバンク(旧B43)」だ。21年のサービス開始から4年で、年間流通取引総額は数百億円に拡大した。

成長を牽引しているのは、アプリとセットで利用できる夫婦や同棲カップル向けのペアカードだ。ふたりの共同口座とそれに紐づいたプリペイドカードを1枚ずつ提供。口座にチャージし、支出をするとリアルタイムで履歴がアプリ上に記録される仕組み。支出は食品、生活用品、公共料金といった具合にカテゴリー分けされ、1カ月の家計簿が自動的に作成される。共働き世帯の増加や物価高により家計が厳しくなるなかで利用者が伸びているという。同様の仕組みで、個人向けや親子向けのカードも展開する。

堀井いわく、特にペアカードの領域は、かつてのフリマアプリとは戦い方が異なるという。「フリマアプリは、複数のサービスを利用する人が多くいる市場。一方で、家計を管理するカードは基本的にひとつしか使わない。いちばん知名度があってエンゲージメントの高い一社が総取りする構造です」。

すでにペアカード領域では独占市場を築き始めており、直近の1年間はサービスにAIなどを取り入れることで機能の拡充もはかってきた。堀井は「家計管理の領域にとどまるつもりはない」という。

これまではスマートバンクが発行するカードの支払い履歴のみがアプリ上で確認できたが、広範囲の支出を可視化できるようアップデート。AIによる紙レシートなどの読み取り機能を取り入れ、外部のクレジットカードや銀行口座の連携を可能にした。

ユーザーの消費行動の改善につなげる機能も実装した。AI支出トークは、お金の質問に回答する機能。例えば「私の無駄遣いは何?」と質問すると、AIが支出データを解析して回答してくれる。「既存の家計管理サービスは、支出の見える化までで、どう改善するかはユーザー任せ。AIを活用し、お金の使い方を改善するきっかけを提供できるようになった」(堀井)。25年上半期のアプリダウンロード数は前年同期比の2.2倍に増加。累計で200万を超えた。

そして今、さらなる付加価値を提供するための挑戦に取りかかっている。それが、「給与のデジタル払い」の取り扱い事業者になることだ。PayPayなどに次ぐ座を狙い、厚生労働省へ申請を行っている。堀井は語る。「今のワンバンクは生活費の管理をするサービスですが、給料すべてを預けてもらう存在になれば、貯蓄や投資など、余剰のお金をどうコントロールするかにまでサポートの範囲を広げられる」。審査過程は険しい道のりだが、この挑戦が実を結べば、1000万人という目標が現実味を帯びる。

文=露原直人 写真=小田駿一

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