北米

2026.01.04 16:00

トランプ政権で勢い増す「債権回収業界」、2.3兆円の巨大ビジネスの内幕

Andrey_Popov/Shutterstock.com

安価な債権買い取りと、訴訟プロセスの自動化による回収

債権の買い取りと回収を組み合わせたビジネスモデルは、仕組み自体はきわめて単純だ。企業は、銀行から病院に至るまで、さまざまな組織が事実上回収不能と判断した請求書や債務を買い取る。こうした債務は通常、残高1ドルあたり10〜15セント(約16〜23円)といった低価格で取引される。債権を取得した企業は、その後できるだけ多くの債務者から返済を回収しようとする。

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債権を買い取る企業は通常、消費者の氏名や債務内容を記したスプレッドシートと、裏付けとなる書類を受け取る。そこから、郵送、電子メール、電話、SMSなどを通じて債務者に接触を重ねる。未払いの債務は多くの場合、消費者の信用情報に記録され、クレジットスコアを押し下げる要因となる。債権回収会社が実際に回収できる金額は、平均すると残高1ドルあたり20〜25セント(約31〜39円)にとどまるが、支払いを得るために訴訟も辞さない。

年間100万件を超える訴訟を起こす大手債権回収会社

January Advisorsによると、ミッドランドだけでも、2025年に消費者を相手取った訴訟を60万件以上起こす可能性が高い。これは、2022年のおよそ30万件から倍増する計算だ。アンコールの広報担当ボルハニは声明で、「当社にとって回収訴訟は最終手段であり、できることならそこに至らないことを望んでいる」とフォーブスに語った。

リサージェントのほうは、2025年だけで100万件を超える消費者向け債務訴訟を起こす見通しだという。同社は、複数回にわたるコメント要請に応じなかった。

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コストを極限まで抑えた自動化と、少額でも提訴する戦略

債権回収業者は、わずか800ドル(約12万円)程度の金額でも消費者を提訴することが多いと指摘するのは、ナッシュビルを拠点とする原告側弁護士のビル・カラディスだ。彼は、債権回収業者から訴えられたり、逆に訴えたりする消費者を日常的に代理している。

こうした少額訴訟が回収業者にとって魅力的な理由の1つは、金額が比較的小さく、資金に余裕のない人でも支払いに応じる可能性が高いことだ。自己破産に追い込まれれば回収業者は何も得られないが、この程度の金額であれば破産に至らず、支払われる見込みがある。このような訴訟は、消費者に強い心理的プレッシャーを与える点でも効果的だ。例えば、医療費700ドル(約11万円)の滞納を理由に判決を下されると、その記録が事実上半永久的に残る場合もある。

業者がこのような少額の訴訟を起こすもう1つの理由は、法的手続きを高度に自動化し、コストを極限まで抑えていることだ。訴状はテンプレート化され、弁護士1人あたりが大量の案件を処理し、業務の一部は外部の法律事務所に委託される。January Advisorsによると、2024年には、法律事務所London & Londonが、コネチカット州だけで7720件の債権回収訴訟をミッドランドの代理として起こしていた。

これは、営業日1日あたり平均29件に相当する。これに対し、アンコール広報担当ボルハニは、「訴訟件数を営業日数で割ると、実態を正確に反映しない場合がある」と反論する。複数の弁護士が同じ案件に関与することも多いからだという。

一方、ピュー研究所のデータによれば、90%以上の消費者は、債権回収業者から訴えられてもそれを無視している。多くの人は、通知に記載された債権回収会社の名前に心当たりがなく、詐欺だと思い込んだり、問題が自然に消えることを期待するためだ。しかし、被告が呼び出しに応じない場合、裁判所は欠席判決を下す。その場合、州によっては債権回収業者が賃金や銀行口座を差し押さえる法的権利を得ることになる。

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翻訳=上田裕資

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