北米

2026.01.04 16:00

トランプ政権で勢い増す「債権回収業界」、2.3兆円の巨大ビジネスの内幕

Andrey_Popov/Shutterstock.com

消費者からの苦情急増と、ミッドランドの強引な回収手法

ミッドランドを訴える消費者は後を絶たない。ほぼ毎営業日、連邦裁判所には、「信用情報に誤った内容を記載された」「債務者への連絡を止めなかった」などとして、困窮した債務者が同社を訴える案件が持ち込まれている。2カ月前に起こされた別の訴訟では、ミッドランドが、すでに債務を完済していたテネシー州の住民に対し、212ドル(約3万円)の支払いを求めて誤って提訴していたことが明らかになった。この訴訟をテネシー州西部地区の連邦地裁で起こすだけで、同社には405ドル(約6万円)の費用がかかっていた。

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過去11カ月で25万件超、消費者金融保護局(CFPB)に殺到する消費者からの苦情

ミッドランドの親会社は、債権買い取りビジネスを手がけるアンコール・キャピタルだ。同社を率いる60歳のアシシュ・マシーCEOはマッキンゼー出身で、ウォートン・スクールでMBAを取得した元コンサルタントだ。

ミッドランドを相手取った最近の訴訟は、市場規模150億ドル(約2.3兆円)に膨らんだ債権回収業界で、消費者からの苦情が急増している流れの一端だ。過去11カ月間に、消費者金融保護局(CFPB)に寄せられた債権回収会社に関する苦情の件数は25万3000件に達し、2024年の同期間の14万件から大幅に増加した。

苦情の内容は、「債務が存在することを示す証拠を回収業者が提示しない」といったものから、「勤務先、親族、友人、知人に執拗に連絡を取る」といった行為まで多岐にわたる。こうした強引な手法が横行する余地は大きい。Urban Instituteによると、信用履歴を持つ米国人のほぼ4人に1人が、少なくとも1件の債務を回収業者に回されている。

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特定状況下での回収停止など、消費者保護を主張するアンコール・キャピタル

アンコール広報担当のファリヤール・ボルハニは、同社が消費者保護の基準を定めており、特定の状況下では回収を停止していると電子メールで説明した。その例には、「医療上の理由で深刻な経済的困難に陥っている場合」や「自然災害の被害者である場合」、あるいは「なりすまし被害を受けて、口座が不正利用されたことが確認された場合」が含まれるという。

ボルハニはまた、アンコールが送付する債務確認通知はすべての規制要件を満たしており、担当者が連絡を取るのは債務者本人に限られると述べた。一方で、進行中の個別の訴訟についてのコメントは控えた。

大手3社の収益構造と、過去最大水準にある個人の債務

時価総額12億ドル(約1872億円)という上場企業アンコールの年間売上高は15億ドル(約2340億円)で、米国最大級の債権回収会社3社の一角を占めている。同社は、この分野の他の企業と同様に金融機関が回収不能と判断した債務を買い取ることで利益を上げている。業界2位のバージニア州ノーフォークに本拠を置くポートフォリオ・リカバリー・アソシエイツ(PRAグループ)も、売上高12億ドル(約1872億円)規模の上場債権買い取り・回収会社だ。3社目は、かつてシャーマン・ファイナンシャル・グループの傘下にあったリサージェント・キャピタル・サービスだ。

2025年第3四半期、アンコールが消費者から回収した金額は前年同期比で20%増加し、1953年の創業以来の最高水準に達した。

約187.2兆円のリボルビング残高と、金融危機以来の未払い債権急増

同社の事業拡大の背景には、人々がかつてない水準の債務を抱え、返済に行き詰まりつつある現状がある。クレジットカードのリボルビング残高だけでも1兆2000億ドル(約187.2兆円)に達している。回収不能として処理されたクレジットカード債務の総額は、1年前に金融危機以来で最大の550億ドル(約8.6兆円)へと急増し、現在も500億ドル(約7.8兆円)前後で推移している。

債権回収会社は、自らを「債権管理会社」や「スペシャルティ・ファイナンス企業」と呼ぶこともあるが、多くの場合、債務の買い取りと回収の両方を手がけている。調査会社January Advisorsによると、この分野の大手3社は、消費者に支払いを迫るため、年間100万件を超える訴訟を起こしている。トランプ政権が金融規制を大幅に緩和した結果、不正行為に対する監督・取り締まりが十分に機能しなくなっている。

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翻訳=上田裕資

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