米国には、クレジットカードの未払い債権や個人のローンの債権など、銀行などが回収を放棄した債権を安値で買い取り、巨額の利益に変える「債権回収市場」が存在する。その規模は約2.3兆円。現在、このビジネスがかつてない攻勢に出ている。
背景にあるのは、過去最大に膨れ上がった個人の借金と、連邦政府による金融規制の大幅な後退だ。回収会社は潤沢な資金と訴訟プロセスの自動化を武器に、医療費やカード払いに苦しむ消費者を法的に追い詰める。消費者から寄せられる苦情は、ほとんど放置されたままだ。監督機関の監視が弱まる中、現場の苦情が黙殺され続ける実態が浮かび上がってきた。
給与差し押さえの実態と、急増する債権回収会社への訴訟
2020年3月初旬、コロナ禍が全米に急拡大する中、ホルスト・ザイベルトは南フロリダの高齢者向け介護施設で、入居者の送迎ドライバーとして働いていた。時給は12.88ドル(約2009円。1ドル=156円換算)にすぎなかった。しかし、ある日、給与が突然25%も差し引かれたことを知った彼は、愕然とした。減額の原因は、サンディエゴ本拠の大手債権回収会社ミッドランド・クレジット・マネジメントが、裁判所の手続きを経て彼の賃金の差し押さえ始めたことにあった。同社は、ザイベルトが支払いを遅延させた3300ドル(約51万円)のクレジットカード債務の回収権をシティバンクから買い取ったのだ。
理由を示さず債務残高を増額、説明責任を果たさない企業
ザイベルトはその後、ミッドランドに分割払いで支払うことに合意し、月49ドル(約7644円)を2年間にわたって1度も遅れることなく支払い続けた。ところがミッドランドは、理由を説明しないまま、残りの債務額を194ドル(約3万円)引き上げた。その後も、期日どおりの支払いを続けていたにもかかわらず、請求額は再び増額され、最終的に合計1571ドル(約25万円)も上乗せされたと、ザイベルトは訴えている。
ザイベルトは数カ月にわたり繰り返し説明を求めたが、ミッドランドはこの明らかな誤りを修正せず、なぜ請求額が膨らんだのかについても説明しなかった。やがて同社は、彼からの問い合わせそのものに応じなくなった。
会計上のミスを主張する弁護側と、本人訴訟で戦う消費者
「無力感に襲われた。どうやってこの問題を正せばいいのか分からなかった」と、ザイベルトは振り返る。2025年10月にミッドランドを相手取って訴訟を起こした彼は、弁護士を雇う余裕がないため、本人訴訟として裁判に臨んでいる。ミッドランド側は訴えの却下を求めており、同社の弁護士は裁判所に提出した書面で、「最大でも会計上のミスがあった可能性を認めるにとどめる。不正行為は否定する」と述べている。



