知的財産権は特許だけではない。最近では広義の著作権の分野が注目されている。アーティストや歌手らの権利を保護しようという動きである。日本では、飲食店などでBGMとして流される楽曲については、作詞・作曲家の有する著作権使用料が支払われる。さらに歌手やレコード会社などの演者関係にも演奏・伝達権を明確に認めようとの機運が高まっている。知的財産の国際条約で、世界では142カ国が対応しているが日本は留保している。日本は伝統的に著作権には敏感でも、これに隣接する権利には大らかだったのではないか。
日本文化をグローバルに展開しようと官民挙げた努力が続くが、その担い手たちの権利を広く保護すべきである。それなしには、ソフトパワーのマネタイズもままならない。リンカーンの言葉をそのままクールジャパン戦略に送りたい。
さて、さら小僧は激闘の末、鬼太郎に敗れ、隠れ里に封印された。強引に人を誘拐・幽閉する暴挙はもちろん許されない。だが、こと権利に関する限りはさら小僧に理がある。令和の世にさら小僧が健在なら(妖怪に権利があるかの議論はあろうが)勝訴するだろう。
ただし、権利の防御は難易度が高いことを肝に銘じておきたい。先のC社は世界中に知財と技術の専門家を多数、配している。さら小僧退治に活躍したねずみ男は、彼にしては珍しくしんみりと述懐した。「この戦いは本当に苦戦だった」と。知財戦略に当てはまる一言だと思う。
川村雄介◎一般社団法人 グローカル政策研究所 代表理事、公益財団法人 日本証券経済研究所 研究顧問。1953年、神奈川県生まれ。長崎大学経済学部教授、大和総研副理事長を経て、現職。


