欧州

2025.12.24 12:00

ウクライナ軍、ロシアの「影の船団」に対する作戦を大幅に拡大

ウクライナ海軍の無人水上艇「シーベビー」。2025年10月17日撮影(Vitalii Nosach/Global Images Ukraine via Getty Images)

対抗策を巡る両国の争い

ロシア軍はウクライナ軍の無人水上艇に対抗するため、航空機や徘徊型兵器で封鎖を突破しようとしている。ロシアメディアは6月、ロシアとウクライナ南部クリミア半島を結ぶクリミア大橋付近での攻撃中に、ロシア製無人機「ランツェト」がウクライナ軍の無人水上艇を攻撃する様子を捉えた映像を公開した。12月には、オープンソースアナリストのアンドルー・パーペチュアが、対空ミサイルを装備したとされるウクライナ海軍の無人機をランツェトが破壊する様子を捉えた動画をX(旧ツイッター)に投稿。攻撃は発射地点から約104キロ離れた地点で行われたという。

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筆者の取材に応じた新米国安全保障センター(CNAS)のサミュエル・ベンデット上級研究員は、ロシアの焦点は、ウクライナ軍の無人水上艇を自国沿岸から可能な限り遠ざけることにあると指摘する。同研究員は「長距離無人機による攻撃が鍵だ」とした上で、最近の報告では、ランツェトとロシア製徘徊型兵器Kub-BLAがともに射程を延ばし、より強力な弾頭を搭載できるように改良されていると説明した。

一方、ウクライナ側の対抗策も進化している。ベンデット研究員は、ウクライナ軍の無人水上艇が既に一人称視点(FPV)無人機を搭載していることを指摘し、ロシア軍の無人機に対する迎撃機として運用することが可能だと述べた。

スウェーデン海軍は、バルト海を航行する制裁対象の影の船団の船舶に乗船するロシア軍関係者を報告した。これは、かつて民間船として扱われていた船舶が、現在では戦略的資産として積極的に保護されていることを示している。

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黒海を巡る争いが続く中、ウクライナ軍は単なる戦闘能力だけでなく、戦場を拡大する能力を実証した。ウクライナ軍は水上、水中、長距離無人機の作戦を組み合わせることで、ロシアの軍事と民間双方の船舶に対する脅威の範囲を拡大し、同国に従来の海上要衝をはるかに超えた防衛を強いている。ロシアの軍事評論家らは、同国が直接的にも非対称的にも対応しなかったことを認め、黒海を越えた商業船舶の防衛で同国が困難に直面していると強調した。

米ピッツバーグ大学で政治学を専門とするウィリアム・スパニエル准教授は、ウクライナ軍がイエメンの親イラン武装組織フーシ派の紅海航路攻撃作戦の一部を応用し、シーベビーのような海軍の無人水上艇を用いてロシアが関与する海上貿易への圧力を維持する可能性があるとみている。地理的制約が少ないため、ウクライナ軍はバルト海や北極圏を含む他の地域でも同様の手法を適用することができる。これらの動きを総合すると、ロシアは拡大する戦域全体で海上貿易を保護せざるを得ない状況に追い込まれていることを示唆している。

forbes.com 原文) 

翻訳・編集=安藤清香

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