イスラエルもこの戦争で、自国の多層型防空システムのなかで最も高性能で高額なアロー3迎撃ミサイルをかなりの数消耗した。
トランプが10月、米海軍の最新鋭空母であるジェラルド・R・フォードを地中海から南米へ移動させるよう命じた結果、中東周辺には現在、米空母が1隻もいない。つい最近まで、中東周辺には米軍の2個空母打撃群が同時に展開することもあり、展開期間が延長される場合も珍しくなかった。トランプによる措置は、ここ数カ月でベネズエラとの緊張がどれほど深刻なものになっているかを如実に示すものだ。
最終的にベネズエラとの戦争になった場合、米軍は新たなイスラエル・イラン戦争が起こった際に、空軍アセットや海軍アセットを中東に迅速に増派する能力が削がれる可能性がある。その結果、中東でイスラエルの防空網に追加の外周防空層を提供するために利用できる米軍の防空戦力、とりわけスタンダードミサイルが減少すれば、イランにとって有利にはたらきかねない。イスラエルとイランの一方あるいは両方が、将来、より大きな損害を出す戦争を避けるために先制行動に出なければならないと考えた場合、破滅的な読み間違いになるおそれもある。
いずれにせよ、2026年に中東と南米で戦争が並行して繰り広げられるリスクは容易に退けられない。現実にそうなれば、2つの戦争の影響は世界全体に波及する公算が大きい。


