草の香りが立つアグリコールから、ジャマイカの強烈なラムまで、ラムの世界は広大である。米国シカゴに本拠を置く飲料評価機関「The Beverage Testing Institute」(BevTest)の殿堂(Hall of Fame)が、その最高水準を一貫して示してきたボトルに光を当てる。
ラムは、世界でも屈指の多様性を持つ蒸留酒かもしれない。150カ国以上で生産され、キリッとしたホワイトラムや草の香りが立つアグリコール・ラムから、重厚で超長期熟成の糖蜜(モラセス)由来スピリッツ、さらにエステルが豊富でファンキーなジャマイカ産ボトリングまで、驚くほど幅広いスタイルが存在する。しかし、この世界的な豊富さの中でも、常に頂点に立ち続けるのは、選りすぐりのごく少数に限られる。
BevTestの殿堂(Hall of Fame)は、単に一度だけ卓越した出来を見せるのではなく、年を重ね継続的にメダルを獲得し続ける希少なラムを称える。これらは、爆発的なイノベーションの時代にあっても、クラフツマンシップ、テロワール(風土の個性)、伝統を体現するボトルだ。以下では、世界的なラム・ルネサンスがもたらす「最高峰」を示す、傑出したラムを詳しく見ていく。テイスティングノートは筆者自身のものだ。
Ron Zacapa Solera Gran Reserva XO Especial Rum(グアテマラ)、アルコール度数40%、750ml
Ron Zacapa(ロン・サカパ)は、糖蜜ではなく、サトウキビの初搾り汁を濃縮した「サトウキビの初搾り蜜」を原料に、Industrias Licoreras de Guatemalaが造る。熟成は、グアテマラ高地の標高約7450フィート(約2300メートル)にある有名な熟成施設House Above the Cloudsで行われ、涼しい気温が酸化と蒸発を遅らせる。
XOは、6年から25年までの長期熟成ラムを、ソレラ(solera)に着想を得た手法でブレンドしたものだ。熟成は、使用済みバーボン樽、使用済みシェリー樽、そして最後にフレンチオークのコニャック樽へと移し替え、重層的な甘みとオーク由来のスパイス感を積み上げる。
香りは、干しイチジクとレーズン、ダークキャラメル、バニラ、トーストしたココナッツ、熟成感のあるオークが豊かに立ち上がり、ベーキング用ココア、シガーボックス、さらに皮革や家具用ワックスを思わせるランシオ(熟成香)のニュアンスがほのかに感じられる。
口当たりはフルボディで力強く、それでいてシルキーである。トフィー(バターと糖蜜を煮詰めたキャラメル菓子)、熟したトロピカルフルーツ、濃い蜂蜜とチョコレート、ナツメグ、クローブ、タバコのタッチ、そしてシェリー樽とコニャック樽由来のトーストナッツの風味が際立つ。
フィニッシュは長く、温かみがあり、やさしい甘みを伴う。ドライフルーツ、シェリーのリッチさ、ココア、オークスパイス、そして軽いハーバルなタバコの苦みが余韻として残る。



