リーダーシップ

2025.12.29 08:30

ナデラ米マイクロソフトCEOも実践、ハーバード大教授が説く「勇気を奮い起こす」戦略

ランジェイ・グラティ|ハーバード・ビジネス・スクール教授(Evgenia Eliseeva)

ランジェイ・グラティ|ハーバード・ビジネス・スクール教授(Evgenia Eliseeva)

「トランプ2.0」時代における大企業を率いるリーダーのあり方とは何か。「勇気」をキーワードに「なぜ今」から「奮う戦略」までを紐解く。


「今こそ、『勇気』を奮い起こすときだ」

ハーバード・ビジネス・スクールのランジェイ・グラティ教授は企業リーダーに向かって、こう呼びかける。

同教授は今年9月、新刊『How to Be Bold: The Surprising Science of Everyday Courage』(『大胆になるには:日常の勇気に関する驚くべき科学』未邦訳)を上梓。勇気の大切さを説いた米ハーバード・ビジネス・レビュー誌9-10月号への寄稿文はカバーストーリーになった。

米国の関税政策や生成AI(人工知能)のエクスポネンシャルな進化などで、日米の企業環境は不確実性を極めている。VUCA(ブーカ=変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)時代に取るべき「勇気の戦略」とは? グラティ教授に話を聞いた。

──なぜ今、企業リーダーに「勇気」が求められているのでしょうか。

ランジェイ・グラティ(以下、グラティまず、勇気の定義から始めたい。かつて私は、「恐怖心を抱かないこと」が勇気だと考えていた。映画のヒーローや日本の侍を思い浮かべ、彼らは恐怖とは無縁の英雄的戦士だと思っていたのだ。

だが、ある時、そうではないことに気づいた。(アパルトヘイト撤廃のために闘った)南アのマンデラ大統領も、「勇気は恐怖の不在ではない」と言っている。勇気とは、今この時に恐怖に直面しつつも大胆に行動することだ。なぜ「今」なのか? それは、私たちが今、何を経験しているのかを理解することが重要だからだ。

世界は「不確実性の危機」にさらされている。テクノロジーや環境、地政学的な不確実性だ。不確実性はリスクとは違う。リスクは定量化などで軽減できるが、不確実性には、濃い霧さながらに、明確な勝算も確実な戦略もない。人は制御不能だと感じると、恐怖の衝動に襲われる。

こうした時代にすべきことは何か。逃げるのか? それとも、恐怖に立ち向かって、断固たる決意で行動を起こすのか? ある研究によると、最近、米企業の決算発表で不確実性に何度も言及した最高経営責任者(CEO)は76%に上るという。恐怖心が蔓延する時代だからこそ、大胆な行動を起こす方法を習得する必要がある。

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インタビュー=肥田美佐子 イラストレーション=エフゲニー・バルフェノフ

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