リーダーシップ

2025.12.29 08:30

ナデラ米マイクロソフトCEOも実践、ハーバード大教授が説く「勇気を奮い起こす」戦略

ランジェイ・グラティ|ハーバード・ビジネス・スクール教授(Evgenia Eliseeva)

「勇敢さ」は後天的なもの

──個人が勇気を奮うための戦略とは?

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グラティ:まず、勇敢な人々の大半は生まれつきではなく、後天的なものだという点を強調したい。ガンジーもマンデラも、生まれつき勇敢だったわけではない。

勇気は、自分自身と世界をとらえる物語、つまり、「ナラティブ」から始まる。人は世界を理解し、自分の役割を模索する。だからこそ、物語を変えれば、「何かできるかもしれない」と思えるようになる。

勇気を出すための戦略のひとつ目は「理解」だ。小さな一歩を踏み出し、行動しながら理解する。座って考え、分析に明け暮れるのではなく、行動して学ぶ。率先して実験し、失敗から学ぶことが重要だ。

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ふたつ目は、人との「つながり」だ。勇敢なリーダーには幅広い支援者がいる。3つ目は、「信念」だ。自らの信念を高く保ち、それに従って行動する。明確な価値観があれば、難しい選択も容易になる。私が話を聞いたウクライナの司令官は、「戦わねばならない」という信念をもっていた。

4つ目は「自信」だ。パーパスをもって訓練し、スキルが「第2の天性」になるまで磨くことで、「何が起ころうと、自分にはできる」という気概が生まれる。多くの起業家には、この「自信」がある。

5つ目は「冷静さ」、つまり、感情のコントロールだ。冷静でないと無謀になる。勇気には明晰な頭脳と思考が必要だ。

──「今」という時代にフォーカスしたとき、最も重視すべき戦略は?

グラティ:行動しながら状況を「理解」することだ。不確実な状況下で犯す最大の過ちは「(恐怖で)固まる」ことだ。行動すれば、失敗しても何かを学べる。

一方、将来的にはCEOだけでなく、若手も含め、万人が勇気をもてるようになってほしい。新しいことに挑戦せず、失敗もリスクも避け、不完全な人生を送っている人は多い。人は行動したことよりも、行動しなかったことを悔やむものだ。

──日本企業のCEOにメッセージを。

グラティ:AIの進化で、企業は大きな転換期を迎えている。今後、勝者と敗者が出てくるだろう。「今」こそ、恐怖心をコントロールして勇気を示す能力を高めるときだ。人々は大胆なリーダーを好む。


ランジェイ・グラティ◎ハーバード・ビジネス・スクール教授。専門は経営管理(リーダーシップ、戦略、組織行動)。同校のMBAプログラムにて事業再生や起業家精神を教えている。著書に『DEEP PURPOSE 傑出する企業、その心と魂』など多数。

インタビュー=肥田美佐子 イラストレーション=エフゲニー・バルフェノフ

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