防弾装備から核廃棄物処理へと広がる「防護ビジネス」の定義
「防護の概念は現在、装甲や防護服の範囲を超えて広がっている」と、10月のCadreの投資家向け説明会でカンダースは語った。防衛システムそのものの強化に加え、エネルギーの保全や、重要インフラの基盤を守ることが重視される局面に入っていると、彼は認識している。
こうした考え方の転換を背景に、Cadreは事業の軸足を着実に広げている。従来は、防弾装備や防護服といった前線向け製品が注目を集めてきたが、同社は現在、防護をより広義に捉えた分野への進出を急いでいる。Cadreは2024年3月、放射線防護製品メーカーのAlpha Safetyを1億700万ドル(約167億円。1ドル=156円換算)で買収した。4月には、使用済み核燃料向けの容器やロボットをはじめ核廃棄物管理、核医学、原子力エネルギー分野向けの製品を手がけるCarr’s Engineeringを9000万ドル(約140億円)で取得した。
相次ぎ買収した原子力安全関連の企業がCadre成長の牽引役
これらを中核とする原子力安全関連の事業は、今やCadreの成長を最も強く牽引する分野となっている。ニューヨーク州ホワイトプレーンズに拠点を置く調査会社CJS Securitiesによると、同分野は現在、Cadreの売上高の約17%を占める規模にまで拡大した。原子力関連銘柄に資金が流入する市場環境も追い風となり、Cadreの株価は年初来で約30%上昇している。この株価上昇により、同社株の28%を保有するカンダースの推定純資産は10億ドル(約1560億円)を超えた。
CJS Securitiesのアナリスト、ラリー・ソロウは、2025年の相場環境について「原子力関連株の多くが、ほかのセクターを大きく上回るパフォーマンスを示している」と指摘する。そのうえで、「原子力はCadreの事業全体ではまだ一部にすぎないが、成長は順調で、今後M&Aが進む余地がある」と分析している。
将来の市場規模拡大を見込み、核施設の業務に着手
Cadreは、同分野の市場規模が将来的に30億〜60億ドル(約4680億円~約9360億円)に達する可能性があると見込んでいる。時価総額が約17億ドル(約2652億円)にとどまる同社にとって、原子力分野は企業価値を大きく押し上げるかもしれない成長領域だ。カンダースはフォーブスとの電話インタビューで、英国のセラフィールド原子力施設での業務や、米国内における核廃棄物の処理事業を例に挙げながら、同社が注力している方向性を説明した。Cadreが保有する事業は、除染や計測機器など、原子力に直接関わる分野に集中しており、その領域を着実に拡張しているという。


