宇宙

2025.12.23 11:00

「みちびき5号機」ブラジル上空で大気圏再突入か、H3ロケットに発生した事象全容とその影響

(c)内閣府

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12月22日、日本版GPSとも呼ばれる準天頂衛星「みちびき5号機」が、H3ロケット(8号機)によって種子島宇宙センターから打ち上げられた。しかし、第2段(上段)による2回目の燃焼が、わずか1秒間で停止した。これによって「みちびき5号機」を予定軌道に投入できず、打ち上げは失敗。地球周回軌道には入ったものの通信は途絶え、その位置も追跡できなくなった。

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宇宙機の軌道追跡で知られる米国の天体物理学者ジョナサン・マクドウェル氏のポストによると、H3の第2段は地球を一周したあと、2周目の近地点(楕円軌道における最低高度のポイント)に達した日本時間の22日13時ごろ、ブラジル上空で大気圏に再突入した可能性が高い。

今回の打ち上げが成功し、さらに2026年2月1日に予定される7号機が打ち上がれば、待望の7機体制が整うはずだった。しかし、打ち上げの失敗によって同計画は停滞を余儀なくされ、原因が解明されるまで後続機の打ち上げも停止されそうだ。

第2段エンジンが突如停止

10時51分、種子島宇宙センターから東に向けて打ち上げられたH3ロケット(22S仕様)は、打ち上げから1分57秒後に固体ロケットブースタを分離。5分1秒後には第1段エンジンを停止して、第1段を分離した。同分離から14秒後には第2段エンジンが1回目の燃焼を開始し、ほぼ予定どおりに7分51秒間の燃焼を終了した。

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上昇するH3ロケット8号機。メインエンジン2基、サイドブースター2基を搭載した22S仕様 (c)JAXA
上昇するH3ロケット8号機。メインエンジン2基、サイドブースター2基を搭載した22S仕様 (c)JAXA

その後、12分47秒間にわたって慣性航行したあと、打ち上げから25分1秒後には2回目のエンジン燃焼が開始された。しかし、その燃焼はわずか1秒間で停止。その結果、第2段に接続したままの「みちびき5号機」は予定軌道に入るために必要な初速度を得られず、やがて南太平洋にあるクリスマス島の管制エリアから外れたことで通信も途絶えた。2回目の燃焼が予定どおり完了すれば、打ち上げから29分27秒後に予定軌道へ投入されるはずだった。

H3の第2段と「みちびき5号機」は、2回目の燃焼が開始された時点で高度387km、秒速7.2km(時速2万5887km)に達しており、いったんは地球周回軌道に入ったと思われた。しかし、通信が途絶えたためJAXAは同機を追跡できず、どのような軌道に入ったのかも不明だった。

第2段エンジンの2回目の燃焼時。燃焼時間がわずか1秒であることがテレメトリー画面からも分かる (c)JAXA
第2段エンジンの2回目の燃焼時。燃焼時間がわずか1秒であることがテレメトリー画面からもわかる (c)JAXA
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編集=安井克至

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