2026年上半期に注目すべきセクター
2026年上半期には、半導体、データセンター向け液体冷却、広告、医療、バイオテクノロジーなど、幅広いセクターに注目が集まる。アナリストは、それぞれの分野における具体的な成長領域を指摘している。
テクノロジーと通信サービス
半導体とその消費電力が成長を生む。米半導体工業会は、AIに不可欠なロジック半導体およびメモリーチップへの需要拡大を背景に、2026年の世界半導体市場は26%拡大し、1兆ドル(約156兆円)規模に達するとの予測を示している。また、データセンター・ダイナミクスは、AI半導体の消費電力が1000ワットを超える水準に達することで、液体冷却の導入が広がると予測する。これにより、7月に筆者が取り上げたバーティブ・ホールディングスなどの企業が恩恵を受ける可能性がある。
広告や通信を含む通信サービス分野も2026年に拡大する。電通によれば、2月に開催される冬季五輪が追い風となり、世界の広告支出は5.1%増加して1兆ドル(約156兆円)を超える見通しであり、これが放送およびデジタルプラットフォームの収益を押し上げる。また、通信事業者は、カスタマーサービスにAIエージェントを導入することで、大幅な効率化を進めるとみられている。
医療とバイオテクノロジー
AIの導入がこの分野の成長を後押しする一方、特許切れが業界再編を促す可能性がある。
デロイトは、2026年にはこの業界のリーダー企業の約30%が、患者の予約管理やデータ分析にエージェンティックAIを活用し、業務効率を高めると予想している。
一方、最大手の製薬企業は特許切れにより収益減少に直面する可能性が高い。ジャナス・ヘンダーソンは、こうした特許切れによる約3000億ドル規模の収益喪失が、がんや免疫の分野で強みを持つバイオテクノロジー企業の業界再編を促すと指摘している。
2026年に想定されるリスクと逆風
2026年上半期の見通しは慎重ながらも楽観的だが、投資家は景気停滞、インフレの長期化、割高な株価評価といったリスクに注意する必要がある。
景気後退は企業利益を脅かし、株価下落を招く可能性がある。JPモルガン・グローバル・リサーチは、米労働市場の「循環的な弱まり」を主因として、2026年に米国および世界経済が景気後退に陥る確率を35%と見積もっている。
メットライフ・インベストメント・マネジメントは、米国ではGDP成長の約70%を個人消費が占めていることから、企業が新規の労働力を雇用できなければ、30%の確率で景気後退に陥る可能性があると指摘する。失業率が上昇すれば、消費余力の低下が経済収縮を引き起こす可能性がある。
こうした失業率の上昇は、インフレと同時に起こる可能性があり、ロイヤル・バンク・オブ・カナダはこれを「ライト版スタグフレーション」と呼んでいる。チャールズ・シュワブは、インフレ率が3%に達し、関税の影響で小売価格が約5ポイント押し上げられる可能性があると予測している。こうしたインフレの再燃が起きれば、FRBは利下げ政策の見直しを迫られる。
株式のバリュエーションは高く、S&P500の時価総額の40%を占める上位10銘柄、すなわちAI成長の恩恵を受ける企業が予想通りの利益成長を実現できなければ、市場は急落する可能性がある。CNBCによれば、ゴールドマン・サックスのデービッド・ソロモンCEOは、株式の高いバリュエーションが調整されることにより、今後1年から2年の間に株式市場が10%から20%下落する可能性があると警告している。
また、AIインフラ投資は急拡大しているものの、それが「実際の利益に結び付く道筋は依然として不透明」であり、導入や収益化に失望が生じれば、テクノロジー大手の株価が急落し、市場全体を押し下げる可能性があると、デジャルダンは指摘している。
まとめ
2026年は、2025年ほどではないものの、市場にとって良好な年になる可能性がある。投資家は、AIブームをけん引する企業がウォール街の予想を引き続き上回り、業績ガイダンスを引き上げられるかどうかに注目すべきである。その成否は、AI関連製品を購入する企業が、投資から具体的なリターンを得られるかどうかにかかっている。


