2026年の市場を動かす主要テーマ
2026年の市場は、AI、地政学的要因、企業利益の成長が主な原動力になるとみられている。AIが具体的な投資収益を生み出し始めれば、ハイパースケーラー、データセンターの建設企業や供給業者、それらを支えるエネルギー事業者の株価が押し上げられる可能性がある。
例年通り、市場は四半期決算に反応する。ウォール街のコンセンサスを上回る成長を示し、業績ガイダンスを引き上げる企業に資金が流入する一方、決算が予想を下回る企業の株価は急落することになる。
AIの進化
AIは2026年に大きく変化する可能性がある。特に、旅行先の検索、最適な航空券やホテルの選択、決済などを自動で行うようなエージェンティックAIによる生産性向上が現実化し、企業の75%がエージェンティックAIに対する投資に踏み切る可能性があるとデロイトは指摘している。一方、フォレスターは、企業はその投資収益に厳しい目を向け続けるだろうとの見方も強調している。
ハイパースケーラーによるデータセンター投資は、関連する建設業者や供給業者全体の経済成長を押し上げる可能性が高い。クレジットサイツは、アマゾン、マイクロソフト、グーグル、メタが2026年に設備投資を36%増やし、その総額は約6020億ドル(約94兆5100億円)に達するとの予測を示している。
バンガードとバークレイズは、こうした資本支出が、所得の伸びを上回る物価上昇がもたらす経済的な逆風を相殺し得ると指摘している。
ゴールドマン・サックスは、AIデータセンターの膨大な電力需要が、エネルギーの安全保障や、送電網の近代化への投資を促すと述べている。
地政学的要因
ナティクシスは、各国が世界全体よりも自国の経済利益を優先する傾向が、関税戦争を通じてインフレ率を高止まりさせ、サプライチェーンを再構築し、資本の流れを国家利益に沿った分野へと向けると指摘している。
JPモルガンとアリアンツによれば、2026年にはこうした世界的な分断が進み、より多くの国が効率性よりも経済安全保障を重視するようになるという。投資家には、特に米国と中国の間の持続的な貿易摩擦に備えたポートフォリオの構築が求められる。
プロロジスは、こうした緊張が、米国や中国と友好関係にある国々への事業拠点の移転を加速させると報告している。さらに、モルガン・スタンレーは、各国が重要技術や防衛産業におけるリスク軽減を目的とした産業政策を実施するとの予測を示した。その結果、防衛、サイバーセキュリティ、エネルギーインフラ分野への資金流入が予測される。
企業利益の成長
アナリストたちは、AI主導の生産性向上と底堅い経済を背景に、企業収益が急伸すると見ている。
2026年には利益が過去最高に達する可能性がある。ファクトセットのデータによれば、2026年におけるS&P500構成銘柄のEPSは309ドルと、過去最高水準になる見通しである。ナティクシスは、現在の「AIへの期待」というフェーズから、具体的な生産性向上と利益率の拡大というフェーズに移行すると予想している。
非テクノロジー分野も2026年に成長が見込まれている。フィデリティは、通信分野の拡大を予想しており、バンク・オブ・アメリカは、データセンターの電力需要により、防衛、電力、公益事業の収益が押し上げられる「セキュリティ・スーパーサイクル」を想定している。


