エリッサ・ロッシ氏はTraliantのコンプライアンスサービス担当副社長である。
企業の行動規範は単なる文書以上のものだ。米国司法省の企業コンプライアンスプログラムに関する最新ガイダンスによれば、行動規範は何よりもまず、法令遵守に対する企業のコミットメントを表明するものである。また行動規範は企業価値を反映し、意思決定の指針となり、上場企業においては株主や消費者に対して誠実さを示すシグナルとなる。
適切に作成された行動規範は、企業とその従業員を不正行為の結果から守るための重要な要素だ。しかし、私の会社Traliantの調査によれば、その重要性は非常に高い。調査対象となった1000人以上の米国従業員のうち、57%が行動規範違反の可能性がある行為を目撃したと回答している。さらに懸念すべきは、違反を犯したか目撃した人の39%が、それを誰にも報告しなかったと述べていることだ。
組織が行動規範の恩恵を最大限に受けるのは、従業員がその内容を理解し、潜在的な違反を発見・回避する方法を知り、行動規範が破られたと思われる場合に誰に連絡すべきかを把握している場合のみである。そのため、行動規範に関する研修が重要なのだ。
修了率から行動分析へのレベルアップ
コンプライアンスリーダーや規制当局は、研修の影響についてより深い質問をし始めている。例えば、DOJ(司法省)の企業コンプライアンスプログラム評価に関する最近のガイダンスでは、検察官は企業が「研修の有効性」をどのように測定しているかを調査すべきだとしている。これには、エンゲージメントの判断や、従業員が対象となる内容を学んだかどうかの確認が含まれる。このような影響データがあれば、企業が調査や訴訟に直面した場合、研修が主要なポイントに関する従業員の知識を向上させたことを確認するデータを提示できる。
そのため、参加率の指標だけに頼るのではなく、先進的な企業は研修の前後で学習者の知識をテストする質問を取り入れることができる。これらの取り組みに対する投資収益率は大きい可能性がある。例えば、研修を完了する前に主要な概念を理解しているかどうかを学習者に尋ね、その後再度尋ねることで、コースを完了するにつれて理解度が向上するかどうかを示すことができる。
学習効果データを収集することで、異なるトピックや研修形式間の結果を比較することも可能になる。データが特定のスタイル、形式、あるいは研修の頻度で従業員がより多くを学ぶことを示している場合、同様の方法で他の研修を実施することで、すべての取り組みがより効果的になる可能性がある。
新世代の学習者のためのデザイン
もちろん、研修のデザインは測定と同じくらい重要だ。最終的な目標は、規制上の期待に準拠しつつも、従業員にとって関連性があり、記憶に残り、実行可能な行動規範研修プログラムを作成することである。
従業員の最適な学習方法を考慮する
多世代の従業員を抱える組織では、従業員の学習嗜好を理解することが極めて重要になる。人は年齢によって根本的に異なる方法で学ぶ。例えば、Z世代の従業員はテクノロジー主導のオンデマンド体験や、テンポが速く、視覚的に魅力的でインタラクティブな研修でより効果的に学ぶ。
これらの嗜好を反映したコンプライアンス研修は、記憶と応用につながる可能性が高い。最良のプログラムは、従業員が実際にどのように話し、行動するかを示す現実世界のシナリオを組み合わせ、教材をトップダウンの指示ではなく、共有された文化的リソースのように感じさせる。
コンテンツが従業員の信頼を育むことを確認する
行動規範研修プログラムは、単にルールに焦点を当てたり、すべきことと避けるべきことを列挙したりするのではなく、価値観に基づいたものであるべきだ。研修が尊重、公平性、包括性などの価値観とポリシーを結びつける場合、従業員はリーダーシップをより信頼する可能性が高い。これを成功させるには、行動規範を倫理的な意思決定のガイドとして位置づけ、企業の原則が実際に機能している現実世界の例を含めることだ。
効果的な行動規範研修に関しては、企業はデータ駆動型と人間中心型の両方のアプローチを取り入れる必要がある。これは、特に若い従業員の多様な学習スタイルに対応し、企業文化への信頼を構築するプログラムを設計することを意味する。そして、単なる修了率ではなく、実際の知識の向上を測定することが不可欠だ。
適切に実施された行動規範研修は組織を統一する。従業員が複雑な状況を明確さと自信を持って対処できるよう支援し、不正行為の報告を促し、企業職場において誠実さが不可欠であるというメッセージを強化する。透明性と真正性が譲れない時代において、行動規範研修の向上は戦略的に不可欠なものである。



