映画

2025.12.25 15:15

Netflixはハリウッドの主役になるか 「創作」か「利益」か、ワーナー争奪戦後の未来

Photo by Mario Tama/Getty Images

さらに、数多くの国際エンタメ産業コンベンションを主催してきたブランデッド社CEOのジャスパー・ドーナット氏も、「合併や買収が過度に進めば、コスト削減や効率重視の発想が先行し、創作の自由が失われる恐れがある。エンタメ産業の根幹である作品制作が損なわれないよう、慎重な判断が求められる」と語る。

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こうしたM&Aへの警戒感がある一方で、若手の監督や脚本家に多くの制作機会を与えてきたNetflixの実績を評価し、同社の勝利を期待する声も業界内では少なくない。

勝者はまだ見えない

独立系映画スタジオ最大手ライオンズゲートの国際事業部門会長、ウイリアム・ファイファー氏は、より戦略的な視点からこの争奪戦を分析する。「パラマウントの狙いは、事業規模を拡大することで、リメイクや続編といった“成功が見込める作品”の権利を確保し、既存IPを軸に安定したビジネスを築くことにある。また、管理や配給部門を整理し、経営の効率を高める意図も明確だ。

一方でNetflixは、ワーナーの映画やテレビ番組という豊富な資産を手に入れることで、世界市場におけるコンテンツ面での優位性を一気に高めようとしている。両社の戦略は、それぞれ合理的だ」と語る。そのうえで同氏は、「HBOの併合による独占性が各国で問題視される可能性を考えると、実現性はパラマウントの方が高いだろう」とも指摘し、この争奪戦が短期決着になる可能性は低いとの見方を示した。

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取材を通して浮かび上がってきたのは、この争奪戦で本当に問われているのが、ワーナーという巨大スタジオを手にした後、どのプレイヤーが、どの思想で作品づくりの仕組みを動かしていくのかという点だ。

コスト効率を高めるための規模拡大と、創作の自由や多様性をどう両立させるのか。ストリーミング主導のグローバル展開と、従来のスタジオシステムの再編は、いま大きな分岐点を迎えている。ワーナー・ブラザーズ・ディスカバリーを巡る攻防は、その行方を占う象徴的な試金石となりつつある。

文=北谷賢司

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