「金建て」で見ると歴史的な安値にある米住宅価格
別のチャートを見れば読者は驚くかもしれない。1970年代半ば以降の米国の新築住宅価格の中央値を、金価格で割った額を表したものだ。簡単に言えば、米国で一般的な住宅を買うのに、金が何トロイオンス必要かを時系列で示している。
誰もが知るとおり、足元の住宅価格はドル建てでは高い。米国勢調査局によると、8月の新築住宅価格の中央値は41万3500ドル(約6500万円)で、7月から約5%上昇している。重ねて言えばこの金額はあくまで中央値であり、市場に出ている住宅の半分はこれより高いのだ。
だが、住宅価格を「金建て」で表示したこのチャートを見ると、新築住宅価格の中央値が最も低い(金100トロイオンス程度)時期が3回あることがわかる。1980年と2011年、そして現在の2025年だ。
このことからわかるのは、アフォーダビリティー危機は必ずしも住宅それ自体の異常な値上がりによって引き起こされているわけではなく、むしろドルの価値が下がり続け、それにともなって金利負担も重くなっているために生じているということだ。
金という物差しで住宅価格を眺めると、消費者物価指数(CPI)や政治的なメッセージが覆い隠しているものが浮かび上がる。「真犯人」は通貨それ自体だということだ。
筆者を含め、多くの人が金こそまさに「本物のお金」だと考える理由もこうした事情と関係している。金は嘘をつかないし、役人によって数字が修正されることもない。議会の予算委員会や、米連邦準備制度理事会(FRB)の予測に左右されることもない。
次に「住宅バブル」という言葉を耳にした際には、ぜひこうした点を思い出してほしい。本当にバブルを引き起こしているのは、わたしたちが価値を測るのに用いている、債務に依存したシステムそのものかもしれないのだ。
不換紙幣の時代は物価の安定を実現できていない
言うまでもなく、これは米国だけの問題ではない。
暗号通貨の情報サイト「コインビューロー」がドイツ銀行のリポートなどを基に、1971年以降の152カ国の平均年間インフレ率をまとめたチャートによると、この間にインフレ率を2%未満に抑えられた国はひとつとしてない。大半の国は4〜10%程度のインフレ率となっているが、なかにはアルゼンチンやブラジル、トルコのように、通貨価値の「ほぼ完全な崩壊」(コインビューロー)に見舞われた国もある。
✨FIAT IS IN AN ETERNAL BEAR MARKET!
— Coin Bureau (@coinbureau) August 9, 2025
Since Bretton Woods ended in 1971, no economy has kept inflation below 2%.
The US, Canada, China, and France averaged ~4%, while Brazil, Argentina, and Venezuela saw near-total currency collapse.
Inflation fuels gold and crypto! 🚀 pic.twitter.com/5mCChTTix0


