このように月面での使用に向けて着々と準備が進んでいます。そのなかで特に注目していただきたいのは、民間主導の開発であるために非宇宙産業の企業との連携が進んでいるということです。イタリアにはプラダというファッションブランドがあります。この新しい船外活動宇宙服のデザインや材料開発などにおいて、アクシオムスペースはプラダとコラボレーションしています。それから、宇宙服に装備されるバイザーについては、サングラスで知られるオークリーと一緒に開発しています。船外活動中に宇宙服のなかでエネルギーが補給できるドリンクについては、グーという会社と開発を進めています。また、月着陸船と宇宙服との間の通信システムについては、フィンランドのノキアと一緒に開発しています。これまで宇宙には直接的に参画していなかった企業と協業することにより、技術的な課題を解決しているのが特徴的です。
また、アクシオムスペースでは重要な宇宙インフラのひとつとして軌道上のデータセンターのネットワークの構築を進めています。この軌道上データセンターには、いくつかの利点があります。さまざまな人工衛星のセンサーが収集した膨大なデータを無駄なく活用できるようになること、そうした宇宙のアセットによる意思決定が可能な限り迅速に行えるようになること、地上と通信する際のいろいろな制約に干渉されない軌道上に意思決定できる計算機を備えること、宇宙インフラのサイバーセキュリティを強化できること、地上でいろいろなサイバーアタックがあったとしても宇宙にバックアップとしてのデータセンターがあれば、政府や企業のレジリエンスが高まることなどです。まだ国際宇宙ステーションに参加していなかった国々の有人宇宙飛行ミッションを現在のISSで実施していることも含めて、アクシオムスペースはもっともっと宇宙を使う、宇宙の敷居を下げる努力をしています。
鹿児島には内之浦と種子島に射場があります。日本で宇宙に一番近い県が鹿児島なのかなと思っています。この鹿児島には優れた技術をもったさまざまな企業の皆さんがいらっしゃいます。しかし、その技術がどういうふうに宇宙に生かせるのかについて、まだ気づいていらっしゃらない方も多いのではないかとも思います。宇宙産業が発展していくためには、『(非宇宙産業から)サプライチェーンに進出していくこと』と『人材育成に注力すること』が非常に重要だと考えています。日本の優れた技術、人材を生かして世界のマーケットのなかに入っていただき、世界の宇宙活動、有人宇宙活動の持続性を支えていただきたいというふうに思っています」


