「京セラを創業した稲盛和夫は鹿児島出身であり、西郷隆盛の有名な言葉『敬天愛人』を社是にしています。今、京セラの天文宇宙向けファインセラミックス部品は鹿児島の国分工場で製造しています。世界ではじめて小惑星から物質をもち帰ることに成功した日本の小惑星探査機『はやぶさ』や後継機『はやぶさ2』の非常用電源として搭載されたリチウムイオン電池の端子部には、強度・耐食性・耐熱性・絶縁性に優れた京セラのファインセラミックス部品が使われています。また、宇宙から帰還して再利用できるロケットとしてJAXAが開発中の実験機には、液体燃料状態を正確に把握するためのセンサー部品として使われています。これらのファインセラミックスは、もともとは半導体製造装置向けにつくった材料でした。既存の材料の新しい可能性として宇宙を目指したのです。宇宙向けではない材料や技術を宇宙に活用し、新しい可能性を追求していくことが大事だと考えています」(神浦)
「衛星は金色のピカピカした服を着ています。これは宇宙用の断熱材でできているのですが、オービタルエンジニアリングでは、その材料開発から製造までを行っています。他には宇宙用ヒーターもつくっています。断熱材もヒーターも日本でつくっているのはオービタルだけだと思います。サプライチェーンの話をすると、このヒーターをつくるだけでもフィルムにアルミを蒸着する会社、線を溶接する会社などがあって、数社がかかわっています。その蒸着する技術は、実はポテトチップスの袋に使われている技術と同じ。同じ機械・同じ工程で行い、厚みだけが違っています。非宇宙のものづくり企業の立場からすると、宇宙用のコンポーネントをつくると聞いたら敷居が高いように感じるかもしれませんが、参入できるチャンスはあると思います」(山口)
「これからは、JAXAが率先してやるだけではなく、企業や大学の皆さんが主役になっていろいろな宇宙開発が進んでいく方向にシフトしていかなければなりません。その際に課題になってくるのがサプライチェーンです。何かものづくりをしたいときにサプライチェーンの各階層で『部品がすぐに手に入りますか?』という課題があります。その課題を解決するために、JAXAでは宇宙戦略基金を立ち上げてものづくり企業の皆さんに資金を提供したり、企業とJAXAがパートナーシップを結んで資金と技術をもち寄って一緒に新しいものをつくり出す共創型研究開発プログラムを行ったり、サプライチェーンの充実につながる支援を行っています。今、アメリカを見ていると、宇宙産業にいろいろな業界の人が参入してきて、ごちゃごちゃにかき混ぜられているという感じです。日本でも、今後は非宇宙産業の人がどんどん参入してきてごちゃごちゃにかき混ぜられることにより、『ここはこういうふうに簡単に突破できるんだ』という事例が生まれていくのだと思います」(柳瀬)
(後編に続く)


