サイエンス

2026.01.09 18:00

驚くべき「タコの知性」 パズルを解き、道具を使い、未来を読む

貝殻をシェルターとして使うメジロダコ(Shutterstock.com)

この論文の研究チームは、通常は哺乳類の認知能力を調査するために使われる手段である「新規物体認識試験」のアップデート版を用いた。この論文の試験では、生後2カ月以上のすべてのタコが、以前に見たことがある物体は手短かに調べるだけで済ませる一方、新たな物体の探査にはより多くの時間をかけていた。

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注目すべきは、この実験でタコが示した能力、すなわち、過去の経験を未来の意思決定に生かす能力を持つには、単なる反射的学習よりも、はるかに洗練された記憶システムが必要になる点だ。このことからタコは、孵化から驚くほど短期間で、周囲の環境に関する長期的な記憶を獲得していることが示唆される。また、タコがこれらの記憶を、成長した後も自らの行動の指針として使っていることもわかる。

3. 道具を使い、未来に備えたシナリオに基づいて計画することさえある

はるか前から、道具は、地球上に存在する高度な知性の絶対的基準と考えられてきた。そして長年にわたり、道具を使う行動を見せる動物は、霊長類やカラス科の鳥、そして(時折こうした行動をする)ゾウにほぼ限定されると考えられてきた。

しかし、『Current Biology』に掲載された2009年の研究では、20匹以上のメジロダコ(学名:Amphioctopus marginatus)を観察した研究チームが、タコがココナツの殻を集めていることに気がついた。その後も観察を続けたところ、タコはこれらの殻を海底のあちこちから運び、さらにこれらを集めて隠れ家を作り上げる様子が確認され、研究チームを驚かせた。

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これらの行動は、真の意味で道具を利用していると判断できる条件を、ほぼすべて満たすものだ。

・タコは、意図を持って殻を選んだ
・さらに大変な作業であるにもかかわらず、選んだ殻をかなりの距離にわたって運んだ
・タコがツールを使うことでメリットを得たのは、のちにココナツの殻で隠れ家を組み立てた時だった

特に、最後の項目に挙げた「未来を見据えた計画性」は特筆すべきものだ。動物がその時々でなんらかの物体を活用するのは、それほど珍しいことではない。しかし、たとえぎこちなく非効率なやり方であっても、のちに必要になるからという理由で、動物が1回ごとに数分をかけて、海底のあちこちから物体を集めてくるというのは、非常にまれなことだ。これは、知性の域を超えて、タコには計画を立てる能力があることを示している可能性がある。

4. 地球上では他に類を見ない特殊な神経系統

タコの知性がこれほど好奇心をそそる理由の一つは、その知性のもととなる神経系統が、私たち人間のものとあまりに大きく異なっている点だ。

比較のために記しておくと、人間の場合は神経細胞(ニューロン)のうちかなり多くが頭蓋骨に集中している。一方、タコの場合は、ニューロンが身体全体に分布している。

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翻訳=長谷睦/ガリレオ

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