人の心が動いた後で、日本経済も動く
——感動を仕組み化することにより、日本経済にどのようなインパクトをもたらせるでしょうか。
田尻:資本主義が行き過ぎると、数字や金銭だけが目的化してしまいます。しかし、従前より「経世済民(世を経め、民を済う)」という言葉があるように、経済活動と人としての道徳や幸福を両立させる土壌があると思います。
我々が仕事をする意義を問い続けると、最終的には「人とは何か」「世界とは何か」「あるべき姿は」そして「何のために仕事をするのか」という問いに帰着するように思うのです。私たちが掲げる「価値主義」とは、そのような究極的な問いが意図する「人としての生き方や幸せ」を大切にしながら、しっかりと経済合理性も追求し、儲けることです。繰り返しますが、その源泉となるのがエンドユーザーの「感動」なのです。
日本のGDPを引き上げる鍵もここにあります。
例えば、日本の高齢者がもつ莫大な金融資産が動かないのは「孫のために使いたい」「自分の人生が終わる前に体験したい」と心から思えるだけの感動的な商品やサービスがないからです。 もし、そこにお金を使いたくなるような「安心」や「感動」を提供できれば、莫大な需要が生まれますし、GDPも大きく上がります。また、グローバル市場を見ても、Appleのような企業が高収益なのは、最終製品を通じてエンドユーザーの感動を掌握しているからです。日本企業も製品に使われる部品や素材で満足するのではなく、BtoBto…toCの視点をもち、最終的な消費者の感動から逆算してビジネスを設計すれば、世界から外貨を稼ぐ力はまだまだ残されています。
「感動」を起点に、ビジネスの仕組みを再構築する。それができれば、日本企業は再び世界で輝けると確信しています。
たじり・のぞむ◎カクシン 代表取締役CEO。京都市出身。大阪大学基礎工学部卒業後、キーエンスにてコンサルティングエンジニアとして国内外の重要顧客を担当。2017年に独立しカクシンを創業、高収益と高賃金を同時に実現する独自メソッドを開発。売上2兆円超の大企業から中堅企業まで規模を問わず成果を創出し、中堅IT企業を4年で年商45億円から88億円へ成長させた実績を持つ。近年はエンジニアとコンサルタント双方の知見を活かし、AIアバターを活用した営業トレーニングシステムなど生成AI活用の仕組みを提唱。Forbes JAPANでは「世界の96賢人」に選出。著書に10万部超のベストセラー『付加価値のつくりかた』(かんき出版)、『構造が成果を創る』(中央経済社)など。


