北米

2025.12.29 15:00

ビバリーヒルズ高校、銃乱射の被害防ぐためトイレでも音声検知──学校で広がる「AI監視」

ビバリーヒルズ高校(Brian van der Brug / Los Angeles Times via Getty Images)

トイレ内に設置した音声検知装置への不正侵入、生徒によるハッキングと脆弱性

もっとも、プライバシー保護の仕組みが整っている場合でも、こうした技術が悪質な監視システムへと転用される余地は残る。トイレ内の音声検知装置Halo(ハロ)を製造するモトローラは、トイレ内で記録された情報は保存していないと説明している。この装置は、銃声や助けを求める叫び声などの「懸念される音」をリアルタイムで検知して警報を発する仕組みだという。

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しかし2025年初め、オレゴン州ポートランドの10代の生徒が、自身の学校に設置されていたHaloをハッキングし、トイレ内のあらゆる音を常時録音できる盗聴装置に変えていたことが明るみに出た。この生徒によると、装置の管理者パスワードを回数制限なしで何度も推測できたことが、侵入を可能にしていたという。モトローラは、ソフトウエアの更新によってこのセキュリティ上の脆弱性を修正したとしている。

モトローラの広報担当者は、同社が「セキュリティを強化するため、ソリューションの堅牢化と検証を継続的に行っている」と述べた。あわせて、最近の成功事例として、学校のトイレで起きた医療緊急事態を挙げた。Haloが助けを求める声や、緊急事態を検知し、アラートを発したことで命を救うことができたという。

安全確保以外の副次的な利用価値、費用対効果を見直す学校の動き

学校側は、こうした監視技術には安全確保以外の利点もあると説明する。ビバリーヒルズ学区のオコナーによると、顔認証は、下校時などに生徒の所在を迅速に確認する手段としても活用できる。カメラの映像から生徒が校内にいるかどうか、どの経路を通ったか、当時の服装などが把握できるため、職員が短時間で見つけ出すことが可能だという。

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またビバリーヒルズ学区では、トイレ用の音声検知装置Haloが25台稼働しており、煙探知や電子タバコの検知にも使われている。ナンバープレート検知を手がけるFlock Safetyと提携先のRaptor Techは、下校時の送迎を管理する「DismissalSafe」というサービスを展開している。これは、迎えの車が駐車場に到着すると職員に通知を送り、生徒が無事に引き渡されたことを確認する仕組みだ。

財政的な持続可能性を理由とした契約解除と、より効果的な予算の使い道

一方で、すべての学校がこうした説明を受け入れているわけではない。公開記録請求によって入手されたメールによると、2023年後半、アマゾンで法執行機関および学校安全分野を担当する責任者が、ワシントン州の警察や学校に対してZeroEyesを紹介していたという。ZeroEyesはその際、ワシントン州バリアンのハイライン学区で成功裏に実施したパイロット事業を例として挙げていた。

しかし2025年初め、同学区は年間3万3000ドル(約515万円)のZeroEyesとの契約について、残り2年分を残したまま解約した。財政的に見合わないと判断したためだ。学区の広報責任者トーブ・タッパーはフォーブスに対し、その予算はより効果的な用途に振り向けたと説明し、AED(自動体外式除細動器)や安全対策チーム用のフォード製SUVの購入をその例に挙げた。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

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