アート

2025.12.25 11:15

キュレーターの目線で振り返る、5回目の「Art Collaboration Kyoto」

2025年 ACK 会場風景 Courtesy of ACK, photo by Moriya Yuki

金沢のギャラリーKeijibanは、ブリュッセルのGauli Zitterと手を組み、Jacqueline Mesmaeker(ベルギー、1929–2023)と Bernard Voïta(スイス、1960年生)の写真と彫刻作品を出展した。両者はいずれもそれぞれの国で長く活動を続けてきた作家でありながら、近年になってから本格的に国際的評価が高まり始めたのだという。

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Keijibanのディレクターであるオリヴィエ・ミニョンは、拠点として金沢を選んだ理由について、そこにはゆるやかでありながらも面白く、密度の高いコミュニティが育ちつつあるからだと語る。短期・長期さまざまなかたちのコラボレーションが、地方の現場で静かに、しかし確実に発酵している。このような小さな変化の積み重ねこそが、ACKというフェアを読み解くうえで見逃せない背景になっている。

KeijibanとGauli Zitterの共同出展(筆者撮影)
KeijibanとGauli Zitterの共同出展(筆者撮影)

今年は、より複雑で実験的な三者協働のブースも登場した。東京の18, Murataがホストとなり、パリのCrèvecœurとロサンゼルス/ニューヨークのMatthew Brownをゲストとして招いた共同出展である。ひとつのブースのなかに、斉藤思帆、Louise Sartor、Omari Douglinの3人の作家を並置した。

18, Murataは、アーティストの村田冬実が品川区で運営する、キュレーション・プロジェクトとインディペンデントスペースの両方の性格を併せもつ場。アーティスト主導の感性を保ちながら、都市間・機関間の協働の回路を絶えず拡張してきたこのスペースが、異なる都市のコンテクストをもつギャラリーと同じブースを構成することで、強いクロスカルチュラルな対話を生み出していた。

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18, Murata、Crèvecœur、Matthew Brownの共同出展 (筆者撮影)
18, Murata、Crèvecœur、Matthew Brownの共同出展 (筆者撮影)

このような3者協働は、ACKが掲げる「コラボレーション」というコンセプトを、単なるスローガンではなく具体的な展示形態として具現化するものでもある。フェアはマーケットの場であると同時に、次世代のギャラリー同士がネットワークを築き、長期的な関係性を模索していく実験の場でもありうる。

とりわけパンデミック以降、ギャラリー間の連携はブースをシェアすることから、作家選定・展示構成・観客への向き合い方までをともに検討する「共同制作」へと移行しつつある。その変化は、従来のフェアにありがちな、売り場同士が競合的に並ぶだけの構図を揺さぶり、ACKをアジアのアートフェアのなかでも特異な「キュラトリアルな生態系」として位置づけるに至っている。

深センを拠点とする新興ギャラリーMANGROVEGALLERYは、WAITINGROOM(東京)と組み、Hou Yijie、土取郁香、川内理香子の3人の作品を紹介していた。MANGROVEGALLERYのディレクターによれば、同ギャラリーのコレクターからもWAITINGROOMの作家への反応は良く、今後はより多くの日本人アーティストを深センで紹介したいと考えているという。同時に、中国のアーティストが日本で発表する機会も増やしていきたいと話していた。

両ギャラリーは、ACKの会期にとどまらない継続的な協働関係の構築を見据えており、土取郁香は来年1月に深センのスペースで個展を開催予定だという。MANGROVEGALLERYはすでに、次のACKで協働できるパートナー探しも始めている。このようなやり取りは、アジアの若いギャラリー同士の補完関係を端的に物語るとともに、ACKが地域間の関係性を長期的な共同制作へとひらくためのプラットフォームとして機能していることを示している。

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取材・文=金秋雨 編集=鈴木奈央

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