「コラボレーション」をコンセプトに京都で開催される国際的アートフェア「Art Collaboration Kyoto」。5回目の今年は世界28都市から72のギャラリーが参加し、フェア会場である国立京都国際会館を中心に京都市広域で国際色豊かな賑わいを見せた。
新たにアワードを創設するなど年々進化するフェアを、「30 UNDER 30 JAPAN」2025の受賞者でもあるキュレーター/研究者の金秋雨が振り返る。
Art Collaboration Kyoto(ACK)には、初回から継続的にこれまで4度訪れてきた。今回は、開幕日の混雑を避け、閉幕日に会場に足を運んだ。
アートフェアのレポートはしばしば「誰よりも早い」速報が求められるが、これまでさまざまな立場でフェアに関わってきた経験から言えば、実際に数日間の運営を経たギャラリーや企業、インスティテューションの関係性、そしてブースの背後にある「現場」の空気を観察する方が、より立体的で具体的なエコシステムが見えてくるのではないかと感じている。
今年のACKも、その独自の構造を保っていた。72の国内外トップギャラリーが参加する「Gallery Collaboration」と「Kyoto Meeting」を軸に、毎年テーマを変えて展開される「ACK Curates」の企画展示や、Public Program、ACK Talks、ACK Kids’ Programsなど多層的なプログラムが全体像を形づくっている。
会場に入って最初に出会うのは、Public Programの一環としてROH and Chapter NYが紹介していたStella Zhongの映像作品『Yolk Velocities』である。この作品は2020年、コロナ禍に制作され、自宅での孤立が長引くなかで、圧縮され、引き延ばされ、重力を失ったかのように感じられる「時間」の特異な感覚を捉えている。
インスタレーションは、国立京都国際会館の象徴的なメタボリズム建築の構造のなかに巧みに組み込まれ、Zhongの実践における主要な関心を、軽やかでメタ的な反省を伴ったかたちで可視化していた。プロジェクションの前を子どもたちが自由に行き交いながら遊んでいる光景も、予定調和ではない、即興的なレイヤーを付け加えていた。
この映像の背後に位置するブースは、HAGIWARA PROJECTSと、今回初めてACKに参加したウィーンのギャラリーSOPHIE TAPPEINERによる共同出展。限られた空間のなかで、渡邊洋平のペインティングとSophie Thunの写真作品が紹介されていた。ギャラリストによれば、今回の協働においては、展示構成の調整を含め真の意味でのコラボレーションが実現したという。「小さなブースのなかで二人の作家をどう見せるか」という制約そのものが最も興味深いポイントにだったとも語っていた。



