コート外でも勢いを加速、先輩起業家にならって投資やコンテンツ制作へ進出
その勢いはコート外にも波及した。2024年にはニューバランスとのシグネチャーシューズ第2弾を発売し、ファナティクスやヘアケアブランドのキャロルズ・ドーター、株式の持ち分を含む契約となったネイキッド・ジュースなどと大型契約を結んだ。ガウフは2025年1月には、新興の女子バスケットボールリーグ「Unrivaled」にも出資した。
だが、ガウフが思い描く次のフェーズは、自身のブランドの活動を単に拡大することではない。その構想の土台には、早くから娘がいずれ自らのビジネスに、より主体的に関わるようになる未来を思い描いていた父の存在があると彼女は語る。
米国でも指折りの「自力で財を築いた女性」とされ、推定純資産3億5000万ドル(約546億円)に達するセリーナ・ウィリアムズは、ベンチャーキャピタル投資家として1つの道を切り開いた存在だ。また、IMGを離れて自身の会社Evolveを設立した大坂なおみや、フォーブスが8月にビリオネアと認定したロジャー・フェデラーが、自らマネジメント会社を立ち上げたことも、ガウフに強い影響を与えた。「自分の判断で、自分の名前を軸に動けるようになると、選択肢は大きく広がると思う」と彼女は語る。
ガウフはすでに、その考えを行動に移し始めている。ストーリーを伝えることへの関心が、制作スタジオReligion of Sportsとの提携につながった。この関係は、2月のスーパーボウルで、父が同スタジオ共同創業者のゴッサム・チョプラと知り合ったことをきっかけに形になった。現時点では具体的な映像作品には至っておらず、ガウフの若い半生を描く本格的なドキュメンタリーが実現するのは、まだ先になりそうだ。
それでも正式発表に先立ち、数カ月前にはネイキッド・ジュースのキャンペーンで協業し、可能性を探っていた。将来、長編映画をプロデュースしたいという構想についても、ガウフは隠していない。
年齢以上に成熟した感性と視点を持ち、周囲の期待を超えて自らのストーリーを伝える
トム・ブレイディ、レブロン・ジェームズ、そしてセリーナ・ウィリアムズなど、数多くのトップアスリートと仕事をしてきたReligion of Sportsのチョプラは、ガウフを長い間見てきたわけではない。それでも、彼女の感性にはすでに強い印象を受けているという。「彼女には、年齢以上に物事を深く理解しているような落ち着きがある」とチョプラは語る。「若い選手は経験が限られている分、物語として描くのが難しいことが多いが、その点で彼女は際立っている」。
ガウフの可能性を見抜いた人物は、チョプラが初めてではない。7年前、ニューバランスのオフィスを初めて訪れた後、当時14歳だったガウフは、最高マーケティング責任者のクリス・デイビスに礼状を送っている。デイビスは、彼女が将来必ず大きな存在になると信じ、そのカードを手元に残していた。2023年にガウフが全米オープンを制した際、デイビスからそのカードの写真を送られた彼女はそれを喜んだ。
「彼女との関係は、最初に出会ったその日から続いている」とデイビスは振り返る。


