アジア

2025.12.23 13:00

フォーブスが選ぶ「アジアの慈善活動家」2025年版、教育分野への寄付がトレンドに

Drazen Zigic/Shutterstock.com

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Forbes Asiaは12月8日、「ヒーローズ・オブ・フィランソロピー(慈善活動の英雄)」の2025年版を発表した。2025年で19回目となる、アジア太平洋地域の慈善活動家たちの貢献を称える年次リストだ。教育へのアクセスの支援は、この地域の慈善活動家の中心的なテーマであり、2025年のリストもその傾向を色濃く反映している。

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中国では、ビリオネアのユー・レンロンが、自身の出身地である浙江省寧波市に設立した大学、東方理工大学(EIT)に対し、自らが率いるオムニビジョン・インテグレーテッド・サーキッツ・グループの株式49億元(約1078億円。1元=22円換算)相当を寄付した。

2025年はまた、科学、技術、工学、数学(STEM)分野でのキャリアを目指す女性を支援する取り組みが大きなテーマとなっている。オーストラリアのデータセンター起業家ロビン・クーダは、女子学生を対象とした20年間のSTEMプログラムを支援するため、シドニー大学に1億豪ドル(約104億円。1豪ドル=104円換算)を寄付した。同様に、香港のソリナ・チャウも、STEM分野を学ぶ女子学生向けの寄宿制カレッジ建設を目的に、母校であるシドニーのニューサウスウェールズ大学に3000万豪ドル(約31億円)を寄付し、女性教育への強いコミットメントを改めて示した。

東南アジアでは、マレーシアのビリオネアのジェフリー・チアが、今後5年間で総額5億リンギット(約190億円。1マレーシアリンギット=38円)を拠出し、サンウェイ大学にマレーシア有数の教育基金を設立する計画を打ち出した。一方、シンガポールでは、ウィー・イー・チョンとウィー・ウェイ・リンの兄妹が代表を務めるウィー家の財団と、同家が支配するユナイテッド・オーバーシーズ銀行が、南洋理工大学に1億1000万シンガポールドル(約133億円。1シンポールドル=121円換算)を寄付した。

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Forbes Asia「ヒーローズ・オブ・フィランソロピー(慈善活動の英雄)」2025年版 その1

順位づけを行わない本リストは、過去2年間の寄付実績を基に選ばれた10組で構成されている。原則として企業による寄付は対象外としているが、非公開企業で、個人または家族が過半数の持ち分を保有している場合は、例外的に含めている。以下に2025年度の「ヒーローズ・オブ・フィランソロピー」に選出された10組を掲載する。

ユー・レンロン(中国)

オムニビジョン・インテグレーテッド・サーキッツ・グループ創業者兼会長○年齢:59歳

ユー・レンロンは2024年、上海上場の半導体メーカー、OmniVision Integrated Circuits Group(オムニビジョン・インテグレーテッド・サーキッツ・グループ)の株式49億元(約1078億円)相当を、自身の出身地である浙江省寧波市に設立された東方理工大学(EIT)に寄付した。同大学は、ユー自身が設立を支援してきた教育機関だ。この寄付は、昨年3月から12月にかけて3回に分けて行われ、一部はユー・レンロン教育基金を通じて拠出された。ユーは今後、EITに対して総額300億元(約6600億円)を寄付する計画だと報じられている。

ユーが2020年に設立構想を公表したEITは、2022年に建設が始まった。人工知能(AI)、新素材、半導体などの分野を中心とする教育課程を提供しており、2025年8月には約200人の第1期生を迎え入れた。2035年までに学生数1万人、教職員1450人規模への拡大を目指している。

2007年に設立したOmniVisionの持ち分が大半を占めるユーの資産は約58億ドル(約9048億円)とされる。今回の寄付は、1984年に2000万ドル(約31億円)を拠出して寧波大学の設立に貢献した中国の海運王、包玉剛(Y.K.パオ)から着想を得たものだと報じられている。

ジェフリー・チア(マレーシア)

サンウェイ・グループ会長○年齢:80歳

マレーシアのビリオネアのジェフリー・チアは11月、2004年に自身が創設したサンウェイ大学に拠出するため、5億リンギット(約190億円)の教育基金を設立すると表明した。これに先立ち、8月には国立大学であるマレーシア国民大学の医学部に「タン・スリ・サー・ジェフリー・チア特別講座」を設けるため、500万リンギット(約1億9000万円)を寄付している。セランゴール州内の2つの小学校に対し、施設の改修を目的として700万リンギット(約2億7000万円)を提供した。

不動産開発と医療事業で財を成したチアは、2010年に教育分野に特化したジェフリー・チア財団を設立した。同財団はこれまでに、奨学金や助成金として累計で約10億リンギット(約380億円)を拠出している。

「私は常に、私たち一人ひとりが人生において、より高い目的を持つべきだと信じてきた」とチアはメールで語っている。「私にとってその使命とは、自らが得てきたものを、将来世代の利益と幸福のために意味があり、実効性のある形で社会に還元することだ」

ドシ兄弟(インド)

ヒテシュ・ドシ(58)パンカジ・ドシ(63)、キリト・ドシ(60)、ヴィレン・ドシ(57)○ワーリー・エナジーズ

インド最大の太陽光発電メーカーであるWaaree Energies(ワーリー・エナジーズ)は10月、創業者で会長兼マネージングディレクターのヒテシュ・ドシとその3人の兄弟であるパンカジ、キリト、ヴィレンが、同社株式の1%を今後12〜18カ月かけてワーリー財団に寄付すると発表した。現在の株価を基にすると、その価値は1億ドル(約156億円)を超える。

2024年にWaareeを上場させた4人は、合計64%の同社株を保有しており、2025年のインドの長者番付入を果たした。

彼らは今後、教育、医療、地域社会の発展といった分野を支援する計画だ。インド各地で学校や寄宿舎を建設する構想も掲げている。「このような重要な分野に投資することで、人々に力を与え、持続的で前向きな変化を生み出したい。私たちが力を合わせれば、より公平で希望に満ちた未来を築くことができる」とドシは10月に語っていた。

ウィー・ウェイ・リン(シンガポール)

パン・パシフィック・ホテルズ・グループ執行取締役、ウィー財団取締役○年齢:73歳

ウィー・イー・チョン(シンガポール)

ユナイテッド・オーバーシーズ銀行副会長兼CEO、ウィー財団取締役○年齢:72歳

ウィー家の慈善部門であるウィー財団は4月、兄妹であるウィー・イー・チョンとウィー・ウェイ・リンが代表を務め、同家が支配するUnited Overseas Bank(ユナイテッド・オーバーシーズ銀行、UOB)とともに、シンガポールの南洋理工大学(NTU)に1億1000万シンガポールドル(約133億円)を寄付した。政府による同額拠出を含めると最大2億7500万シンガポールドル(約333億円)規模となるこの寄付は、NTUの学生への経済的支援のほか、恵まれない家庭の子どもたちへの学習支援やメンタリングの提供に充てられる。

ウィー財団は7月にも、看護師の大学院教育や研修を支援するために設立した看護学術基金に対し、570万シンガポールドル(約6億9000万円)を追加拠出した。この基金は2022年、国営医療グループであるSingHealthの病院で働く看護師を支援する目的で、500万シンガポールドル(約6億1000万円)の初期拠出によって創設された。

ウィー財団は2009年、昨年死去した銀行界のビリオネア、ウィー・チョー・ヤウによって設立された。「教育を通じて若者が自らの可能性を実現できるよう支援するという、父の遺志を称え、NTUを支援できることを誇りに思う」とイー・チョンはプレスリリースで述べている。

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翻訳=上田裕資

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