ソリナ・チャウ(香港)
ホライゾンズ・ベンチャーズ共同創業者○年齢:64歳
ビリオネアのテック投資家であるソリナ・チャウは11月、母校であるシドニーのニューサウスウェールズ大学(UNSW)に、STEM分野を専攻する女子学生向けの寄宿制カレッジを建設するため、3000万豪ドル(約31億円)を寄付した。チャウが率いるH.S.チャウ財団を通じて行われたこの寄付は、彼女が共同創業した香港のベンチャーキャピタルHorizons Ventures(ホライゾンズ・ベンチャーズ)にちなんで名付けられた「ホライズンズ・ビルディング」の建設資金に充てられる。同施設は2030年の開設が予定されている。
UNSWで商学の学士号を取得したチャウは、フェイスブック、スポティファイ、音声アシスタントのSiriといった企業への初期投資で大きな成功を収めた。彼女は、1996年に設立した自身の財団を通じ、女性の教育や医療分野の支援を目的に、累計2億ドル(約312億円)超を寄付してきた。
「UNSWでの日々を振り返ると、常に『転機』という言葉が思い浮かぶ」とチャウは11月に開かれた大学のイベントで語り、この寄付が「私の進むべき方向、そしておそらく自分自身を見いだす手助けをしてくれた大学への、心からの感謝のしるしだ」と述べていた。香港一の富豪として知られる李嘉誠の長年のパートナーでもあるチャウは、李嘉誠基金会の理事も務めている。
ロウ・タック・クオン(インドネシア)
バヤン・リソーシズ創業者兼社長○年齢:77歳
インドネシアの石炭ビリオネアのロウ・タック・クオンは3月、自身の名を冠したロウ・タック・クオン財団を通じて、シンガポールの南洋理工大学(NTU)に800万シンガポールドル(約9億7000万円)を寄付した。同財団は、教育、医療、社会福祉分野に重点を置いている。NTUによるとこの寄付金は、経済的支援を必要とするシンガポール人学生向けの新たな給付型奨学金の創設や、インドネシア人の大学院生への奨学金提供に充てられる。ロウの息子デービッドは2004年、NTUで工学の学士号を取得している。
母国でも、バンドン工科大学やインドネシア大学への寄付など、同様の基金拠出を行ってきたロウは、若い世代により良い未来を残したいと語っている。彼は、2023年には娘エレインの母校であるシンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院に、アジア各国の公務員向けリーダーシップ・プログラムの運営や、公共政策および国際関係を専攻する学生への奨学金提供を目的として、過去最大となる1億100万シンガポールドル(約122億円)を寄付した。シンガポール生まれで、石炭採掘大手バヤン・リソーシズを創業したロウの純資産は250億ドル(約3.9兆円)とされる。
サイラス・プーナワラ(インド)
セラム・インスティテュート・オブ・インディア創業者兼会長兼マネージングディレクター○年齢:84歳
アダール・プーナワラ(インド)
セラム・インスティテュート・オブ・インディアCEO○年齢:44歳
ワクチン事業で財を成したサイラス・プーナワラと息子のアダールは10月、非公開企業であるSerum Institute of India(セラム・インスティテュート・オブ・インディア)を通じて、英国のサイエンス・ミュージアムに1000万ポンド(約21億円。1ポンド=211円換算)を寄付した。これは同館が受け取った海外からの寄付としては過去最大規模となる。ロンドンの同博物館は、この資金を使い、常設展示「近代世界の形成(Making of the Modern World)」を、2028年の公開が予定される「発明の時代:セラム・インスティテュート・ギャラリー(Ages of Invention: The Serum Institute Gallery)」へと刷新する計画だ。
展示面積は2200平方メートル超に及び、過去250年にわたる科学技術の革新を包括的に紹介する。世界最古級の現存する蒸気機関車や、英国の物理学者J.J.トムソンが電子を発見した際に使用した陰極線管、ドイツの天文学者キャロライン・ハーシェルが用いた望遠鏡などが展示される予定だ。
「この寄付によって、この象徴的な空間を刷新し、次世代に刺激を与えるとともに、世界を形作ってきた科学の驚くべき歩みを称えたい」とアダールはプレスリリースで述べている。


